主演はノーギャラ「カメ止め」興収は誰の懐に? 日本映画界“搾取”のカラクリ

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小規模な「カメ止め」の特殊性

「カメ止め」は、一般的な映画とは異なり、大手配給会社や製作会社が作ったものではない。監督と俳優の養成スクール「ENBUゼミナール」の「シネマプロジェクト」というワークショップから生まれた作品だ。

 今作は上田監督にとっては初の長編映画であり、演者もワークショップのオーディションで選ばれた無名の役者たちである。製作陣営も上田監督が代表を務める映画製作チームが担った。さらに、元々都内2館の映画館でしか上映予定がなかったため、当初の配給も製作元であるENBUゼミナールだった。

 いわば、一般的な国内商業映画とは異なり、完全に身内で作った極めて小規模な映画だったのだ。

 その後、全国拡大上映の際、配給に関しては大手配給会社「アスミック・エース」が協力した。一般の読者にとっては、ワークショップでの映画製作はあまり聞き馴染みがないだろう。しかし、映画業界の中では身近なものだという。

「ワークショップで映画を作ることはよくあります。しかし、ここまでヒットするのは異例です。メジャー作を手がけていない限り映画監督は食えないため、ワークショップを開催して稼いでいる人がほとんどです。役者からレッスン料を貰い、演技指導と自身の作品のオーディションを兼ねてやっています。また役者も指導とオーディションが兼ねられているため集まる人が多いです」

 ちなみに、「カメ止め」を生み出したワークショップを主催したENBUゼミナールは、監督や俳優を目指す人のための養成スクールとして1998年に設立された。スクールの代表である市橋浩治氏は、「カメ止め」のプロデューサーとしても映画に関わっている。

 これまで映画業界の仕組みや、「カメ止め」の特殊性を整理した。これを踏まえて、次に、30億にも達した“「カメ止め」バブル”で一番美味しい思いをしているのは誰なのかを探っていこう。

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