ファン急増中「岡田健史」棒演技が清らかさの秘訣! 罪悪感の包囲網が秀逸「中学聖日記」

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 たとえば、10歳の年の差恋愛。このご時世、35歳と45歳なら珍しくもなんともない。でもこれが15歳と25歳なら? たとえ互いに好意と同意があったとしても、許され難いのが現代の日本。そんなタブーを描く「中学聖日記」に夢中だ。障壁が高いほど恋愛ドラマは面白い。そこに背徳感や罪悪感が伴うほど、私の好物だ。

 主役は中学校教師の有村架純。担任となったことで張り切るが、婚約者の町田啓太とは遠距離恋愛に。双方の両親は「仕事を辞めて、商社勤務の町田を支えるべきだ」と望むが、有村に教職を辞める気はなかった。

 しばらくは遠距離交際でという段階で、自分が受け持つクラスの生徒・岡田健史から徐々に、そして熱烈に好意をぶつけられる。中学生男子のド直球な情熱に、次第に心を奪われていく有村。その年の差、10歳。でも、岡田は15歳の未成年。

 ドラマ初出演の岡田の容貌は、中学生にしては完成度が高すぎる。が、なかなかの棒演技がこの難役には最適。「先生のこと好きになっちゃいました!」「僕には聖ちゃん(有村)しかいない」と思春期特有の視野狭窄っぷりは、棒読みの方が清らかさが出る。かと思えば、同級生女子に「あいつ気持ち悪い」とつぶやいたり、グズグズと泣く有村に「なんか面倒臭い」と心の中で思ったり、若い男にありがちな残酷な面も覗かせる。自分の思春期の青さと苦さを思い出しちゃって切ない。甘い思い出なんかないのだ、思春期の恋に。

 15歳と25歳の淡い恋は結局実らず。恋人の町田にも、岡田の母・夏川結衣にもバレて、有村は中学校を追われる。町田とも別れる。

 何が好きって、罪悪感と包囲網だ。有村が、教師という立場で生徒を好きになってしまった罪悪感を背負い続ける点、正義と倫理と世間体という包囲網に責め続けられる点。要するに、罪と罰を描く恋愛モノが好物なのだ。すれ違いや勘違いをご都合主義で押し売りされても辟易するし、美談も偽善もいらねえんだわ。

 有村を追い詰めたのは、恋人の町田であり、町田を狙う女上司・吉田羊であり、息子を守ろうと牙を剥いた夏川でもある。三者三様、それぞれが己の経験値を踏まえた大人対応でもあり、有村の若さと甘さが対比として浮かび上がるのがいい。

 町田は、優しさと気遣いの塊で、包容力もある男だ。だからこそ余計に有村の罪の意識は重くなるという構図に。羊は羊で、正々堂々と町田を獲得するために奔走。恋多き女だが案外不器用で直球勝負、たぶん損が多い。有村の理解者でもあり、ある意味、敵でもある。夏川は不倫の恋を泣き濡れて忘れた過去があり、だからこそ息子には清くあってほしいと願う母心。怒りの矛先を有村に向け続ける。恋心は誰にも止められないし、否定もできないはずなのに、人は人を律したがるし、罰したがるんだよね。

 第2部はその3年後を描く。つまり、18歳と28歳だ。新たな人物も登場し、さらに有村が追い詰められる展開へ。TBSは「若き日の過ち」を描くドラマが秀逸。そこは胸を張ってほしいわ。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2018年11月29日号掲載

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