年金の「繰り上げ受給」「繰り下げ受給」を夫婦で分ける裏技 準備は10年前から!

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夫婦でしっかり受給

 とはいえ、高齢者となれば何らかの持病を抱え、健康への懸念は拭えない。用心のため早めの受給を選択する場合もあるだろう。

 だが、そんな人こそ要注意と、中村氏が続ける。

「繰り上げ受給を始めてから、病気や事故で後遺障害が残っても、ごく一部の例外を除き『障害年金』を請求できなくなります。通常、65歳以前に所定の障害状態と認定されたら、老齢年金か障害年金、どちらか金額の多い方を選択できる仕組みになっているので、繰り上げ受給をしてしまうと、その権利自体を手放してしまうことになるのです」

 まだ命があれば不幸中の幸いともいえるが、繰り上げ受給者の配偶者が亡くなり、遺族年金を受け取った場合、総受給額が減るデメリットもある。

 生死を分ける老後の生活で損をしないためには、夫婦でしっかり受給年齢を考えるべきなのだ。

 ファイナンシャルプランナーの横山光昭氏は、

「年下の配偶者を持つ夫婦なら、国民年金は繰り下げて増やす一方で、厚生年金は受給して『加給年金』をしっかり貰うのがお得な方法です」

「加給年金」とは、厚生年金を貰い始めた時点で、配偶者が65歳未満の場合に限り、支給されるもの。例えば、夫が65歳で妻が60歳の夫婦なら、月額3万2千円ほどが夫の厚生年金に加給される。

 この場合、5年間、丸々受け取れば約195万円を手にすることができる。

「夫が繰り下げ受給を選んだまま妻が65歳に達すると支給されませんが、国民年金を繰り下げ、厚生年金だけ受け取る形にすれば加給年金は貰えます。また、夫の年金や貯金で暮らせるなら、一般的に女性の方が長生きしますから、妻の年金だけを70歳まで繰り下げて増やすという方法も制度的に可能です。もちろん、資産がある夫婦なら2人揃って繰り下げて増やす選択肢もありますが、老後資金に不安のある方は、55歳くらいのタイミングで、貰える年金額や貯蓄額と、生活費の兼ね合いを検討し、少しでも繰り下げ受給ができる環境を整えるべきです」(同)

 年金を貰う10年前からの準備が肝要なのだ。

(3)へつづく

週刊新潮 2018年11月8日号掲載

特集「『75歳』の選択肢は政府の罠!? デマが飛ぶ『年金受給』は何歳が正解か」より

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