「マクドナルド」vs.「モスバーガー」の明暗 夜マックは絶好調、モス苦戦の原因は…

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モスバーガー「11年ぶり赤字転落」の衝撃

「モスバーガー」を運営するモスフードサービスは10月29日、19年3月期連結決算の最終損益が8億円の赤字になる見通しだと発表した。

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 今年の5月時点では25億円の黒字を見込んでいたのだから、文字通りの転落だ。原因は8月に発生した食中毒だとされている。

モス側の発表によると、8都県(栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、山梨、長野)の19店舗を利用した計28人が食中毒を訴えた。赤字は2008年3月期以来の11年ぶりだという。

 しかしながら、それまでモスが絶好調だったのかと言えば、決してそうではない。特にモスとマクドナルドの明暗は鮮明になる一方だ。

月刊誌「飲食店経営」(アール・アイ・シー)は9月号に「決算特集第2弾 2018年 11月期から4月期に本決算を迎えた外食上場89社決算ランキング」を掲載した。外食業界全体における、モスとマックの位置をご覧いただきたい。

 まずは売上高だ。「飲食店経営」が作成した上場89社のランキングで、ベスト5は以下のような社名が並ぶ。

【1】ゼンショーホールディングス(5791億800万円)
※「すき家」「ココス」「華屋与兵衛」などを経営
【2】すかいらーく(3594億4500万円)
【3】日本マクドナルドホールディングス(2536億4千万円)
【4】コロワイド(2459億1100万円)
※「牛角」「かっぱ寿司」「フレッシュネスバーガー」などを経営
【5】吉野家ホールディングス(1985億300万円)

 こうした上位陣に対し、モスバーガーを経営するモスフードサービスは713億8700万円。16位という順位になった。次は会社の成長率を示す「売上高伸長率」をご覧いただこう。

【1】ペッパーフードサービス(62.2%)
※「いきなり!ステーキ」や「ペッパーランチ」などを経営
【13】日本マクドナルドホールディングス(11.9%)
【61】モスフードサービス(0.6%)

 このランキングでは、65位から成長率がマイナスとなっている。モスフードサービスが、ぎりぎりでプラス成長を維持した状況が表れている。

 最後は、企業全体の強さを示すと言われる「経常利益額」だ。ベスト3と、モスフードサービスの前後もご紹介する。

【1】すかいらーく(255億1500万円)
【2】日本マクドナルドホールディングス(197億1800万円)
【3】ゼンショーホールディングス(176億5600万円)
【15】松屋フーズ(43億7500万円)
【16】モスフードサービス(39億1300万円)
【17】SFPホールディングス(38億2800万円)
※「鳥良」「磯丸水産」などを経営

 両社の明暗は、日本経済新聞の記事にも現れている。マクドナルドなら「マクドナルドの9月既存店売上高8.4%増 月見バーガー好調」(18年10月4日電子版)との見出しなのに対し、モスバーガーは「モス苦戦、消えた持ち味 『健康』埋没しマックと差」(17年11月10日電子版)という具合だ。

 だが、かつて経営危機が報じられていたのはマクドナルドのほうだった。フードサービス・ジャーナリストの千葉哲幸氏(60)が指摘する。

「マクドナルドは2000年代初頭に経営が悪化します。そのため04年に原田泳幸氏(69)が社長に就任し、不採算店の閉鎖、地域本部制の廃止、24時間営業の推進など、経営の効率化を進めて00年代後半には成功を収めます。ところが10年代から顧客減少と売上の低迷に苦しみ、建て直しのため13年8月にサラ・カサノバ社長(53)が就任することになりました」

 すると翌14年7月に中国メーカーが使用期限の切れた鶏肉を使用したり、非衛生的な取り扱いでチキンナゲットを製造していたことが判明。15年には異物混入事件が相次ぎ、客数は32カ月連続で前年割れ、14年と15年は2期連続で赤字と危機的な状況に陥る。

「あの頃は『マクドナルドは終わった』が、専門家の間でもリアリティを持って語られていました。外国人社長では、この危機を乗り越えることはできないという声も、決して少なくなかったですね。ところがカサノバ社長は、まず現場と顧客の声に耳を傾けることから建て直しを図っていきます」(同・千葉氏)

 47都道府県で顧客との会合を持ち、特に小さな子供を持つ母親の意見に耳を傾けた。現場の店長やスタッフとの対話も重視。苦境にありながら、老朽化店舗の改装など店舗への投資を加速していくと、16年ごろから客数が回復してきた。

「マック復活に大きく寄与したのが宣伝戦略です。16年には新商品の名称を公募し、ゲーム『ポケモンGO』とのコラボを果たしたほか、12のバーガーからお気に入りを投票する『第1回マクドナルド総選挙』も大きな話題となりました。17年には『マック』と『マクド』の愛称を選ばせる投票キャンペーンを行ったことも記憶に新しいですが、これによって過去の不祥事のイメージを払拭することに成功したんです」(同・千葉氏)

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