肥料会社の株を急騰させた「バカマツタケ」 肝心の味は

国内 社会

  • ブックマーク

Advertisement

 植物や動物には「ニセ」とか「モドキ」と呼ばれるものがあるけれど、「バカ」とつけるのは、ちょっと可哀想だろう。何しろ、兜町も驚かせたほどのキノコなのだ。

 兵庫県の肥料メーカー・多木化学が「バカマツタケ」の完全人工栽培に世界で初めて成功したと発表したのは、10月4日のこと。すると、翌日から同社の株価は急騰し、3日連続のストップ高。日経平均株価が1千円以上暴落した11日も値上がりを続け、なんと4連騰を記録したのだ。

 さっそく同社に聞いてみる。

「株価がこんなに上がるなんてビックリしましたが、バカマツタケは当社の柱であるアグリ(農業)ビジネスの一環として研究していたものです。社員の一人が人工栽培出来そうだと提案し、やらせてみたのが始まり。それ以来、6年越しの成果です」(担当者)

 バカマツタケは松茸の近縁種。本物がアカマツの林に生えるのに対し、バカマツタケはミズナラなどの広葉樹林に生えることから“バカな松茸”という意味でこう呼ばれるようになったという。数が少ないためスーパーで売られることはなく、田舎の「道の駅」や朝市で時たま見かけるぐらいだ。1パック2千円程度と松茸よりは安いが、場所によっては、そのまま「松茸」として売られていることもある。

 菌類に詳しい研究者によれば、

「名前とは逆にバカマツタケの人工栽培は至難の業。本来、生きている木の根にしか共生できない松茸類を、室内の容器で育てたことが画期的なのです」

 で、肝心の味はというと、

「見た目は、やや小ぶりですが、味は松茸そのまま。香りは本物より強いぐらいです。実際、料理して食べてみましたが、土瓶蒸しも、炊き込みご飯もいけますよ。松茸だと言われたら分かりません」(前出の担当者)

 同社では、これから量産技術を確立し、3年後には販売に漕ぎ着けたいと意気込む。株式市場が「バカ騒ぎ」するわけだ。

週刊新潮 2018年10月25日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。