「台場さん目を覚まして!」と言いたくなる出来の「スーツ」(TVふうーん録)

エンタメ 芸能 週刊新潮 2018年10月25日号掲載

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 今期のフジテレビドラマには、なんというか哀愁と諦観が漂う。飲み屋にて大声で自慢話を延々繰り広げる初老男性のようだ。仮に台場さんと名付けてみる。 

 台場さんはあまりに臨場感たっぷりの話しぶりなので、「え、それっていつの話ですか?」と聞くと、30年以上前だったりする。彼はいつも「つい昨日のことのように」話すのが特徴だ。しかも、かなり盛って話す。

 どうやら耳まで遠くなってきた台場さんに伝えたい。

 汐留さんも、赤坂さんも、若ぶって、いろいろなことに炎上覚悟で挑戦してるよ。若い女性にも支持されているんだって。え、炎上がわからない? 台場さんも経験したでしょ? 忘れた? 

 お育ちのいい神南さんは、神クラスの傑作もあるけれど、その他が神も仏も見放すレベルの駄作だって、頭かいてた。でもいよいよ落語に手を出したらしいよ。伝統芸能に強いからなぁ。

 で、六本木さんはどうしてるって? 金持ちのほうは相変わらず、年寄り狙い。いつもの派手で無礼な女・こうるさい小柄紳士・ワーカホリックの熟女で固めるってさ。六本木一座、強いよね。貧乏なほうの六本木さんは我が道を行って、奇天烈な実験してる。ローカル局と笑ってられないよ。

 でさ、台場さん! 「SUITS」も「黄昏流星群」も「え、今、このセレクト?」。「え、それっていつの話?」と言いたくもなるよ。しかもようやっと引っ張ってきた人も、トレンディドラマ時代の在庫一掃セール状態。台場さんの懐古趣味に付き合わされる役者も、気の毒っちゃ気の毒。織田裕二と鈴木保奈美なんて、公開処刑だよ。拙(つたな)い頃の自分の映像を毎日流されて……って、台場さん、寝ちゃったよ……さて、本題に入ろう。

 アメリカで大人気のドラマ「SUITS」日本版だそうで。本家にそこそこ忠実に作るも、全体的に色気がない。気のせいか、覇気も勢いもない。微妙なテンションのまま、スーパーエリートの世界を描く。本家では、鼻持ちならないエリートの下半身事情あり、大麻常習の後ろめたさありで「あふれ出る業欲」があったけど、日本のテレビドラマでは「業」を一掃&追放。

 ねちねちと嫌がらせをしてくる同僚(小手伸也)や、有能で毒舌、機知に富む秘書(中村アン)は原作と近似値、あるいはそれ以上なので、よしとしよう。が、織田裕二はなんだかくすんで見えるし、鈴木保奈美は甘ったるくて剛腕所長に見えないし、中島裕翔は不遇の天才に見えない。業を削った設定の中途半端さが、役者の輝く場を奪う。いやそもそもミスキャストという声も聞こえてくるけれど。

 訴訟王国で犯罪天国のアメリカだからこそ活きる設定を、日本版にするとこうも萎縮するかという悪い例。

 初回の視聴率は高かったようだが、今後のエピソード次第。というか、すでに暗雲垂れこめている気もする。次々と各局で新ドラマが放送され、ネット上の話題はあっという間に他局のドラマに移っていったもの。

 ほら、台場さん、起きて! え? 高視聴率を獲った? それ……夢だったのでは?

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。