〈大麻を吸って授乳したら、赤ちゃんもハイに?〉 解禁「カナダ」政府の過激PR活動

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 10月17日に大麻を解禁したカナダでは、国旗のメイプルがヘンプ(麻)になりそうな勢いだとか。販売店の前に100名以上が列をなしたなんていう話は日本でも伝えられるが、そんなお祭り騒ぎの背景には、政府によるこんな取り組みがあった。

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 解禁することで、“毒を持って毒を制する”。このたびの合法化には、どうやらこんな狙いもありそうだ。というのも、

「これまでのカナダの大麻事情は、街を歩いていて通りすがりの人が吸っていたり、コンサート会場で回し呑みをしていたりと、“違法だけれども大目にみている”という状況でした。中には小学校の高学年生が吸っていたなんて話も。タバコの方がかえって悪いとされていたような印象です」(カナダ在住ライターの関陽子氏)

 こうした大麻の上に君臨しているのが、さらに危険なドラッグの類。であればいっそのこと大麻を解禁してしまい、アブナイ方向に流れていくのを防ごう、という意図があるそうだ。

「特にティーンエイジャーをドラッグに向かわせないという狙いがあります。解禁の反面、18歳未満への販売や譲渡の取り締まりは厳しくなりました(※最長14年の禁錮刑)。大麻を吸っていた18歳ギリギリの子たちは悔しいでしょうね。大麻を覚えてしまったのに、吸うと以前より厳しい処罰を受ける。あとちょっと待てば合法的に吸えるわけですから」

 オトナはOKだがコドモはNGという姿勢は、例えばカナダ政府がHPで公開している「Don’t Drive High(ハイになって運転するな)」というページが、ゲーム風になっていることを見ても分かるかもしれない。URL:https://www.canada.ca/en/campaign/don-t-drive-high.html

大麻を吸って車を運転してはいけないことをPRする趣旨なのだが、用意されているのは、どこかで見たレースゲーム仕立ての短い動画(解説にははっきりと「マリオカート風」と書いてしまっている)。4人対戦の冒頭のキャラクター選択から映像は始まるが、なにやらプレイヤー3だけ動作が遅い。ほかの3人が決定した後になってようやくキャラ選択を済ませると、

〈マリファナはあなたの反応時間を遅くします〉

 の文字。そしてレースが始まると、プレイヤー3はスタートダッシュで出遅れる。

〈大麻使用者の2人に1人は、運転に大きな影響を与えると考えない。5人に1人は、悪い影響を及ぼすとは全く思わない〉

 こう表示されたあと、路上にあったバナナの皮で滑って、レースは終わる……。

赤ちゃんもハイになりますか?

 同様に“アクションRPG風”動画もあって、こちらは装備品に「ジョイント(紙巻大麻)」を選択すると、「判断力」や「注意力」といったステータスが一気に低下する。いずれも訴えるのは“Driving high is not a game.(ハイになって運転するのはゲームではない)”というメッセージである。

「カナダ政府は90年代からネットを取り入れたPR活動に力を入れていて、その面白さには定評があります。この動画を含め、ちょっと過激なものもありますが」(先の関氏)

 もちろん、真面目なコーナーもあって、例えばQ&A形式で大麻にまつわるアレコレに答えるもの。吸わない(吸えない)身である我々でも気になるトピックスをいくつか挙げると、

Q.私がマリファナを吸って授乳したら、赤ちゃんもハイになりますか?
A. 大麻に含まれる物質は、妊娠中に母親の血液を通して胎児に運ばれます。また、出産後には母乳に含まれます。

Q. 大麻を吸うと統合失調症が発症することがありますか?
A. メカニズムはまだほとんど分かっていませんが、大麻使用は精神分裂病などの精神病を発症するリスクを増加させることがあります。これは、特に以下の人に当てはまります。「若い年齢で大麻を使い始める」「大麻を頻繁に(毎日またはほぼ毎日)使用する」「本人または家族に統合失調症の病歴がある」。

Q.友達が大麻中毒になったら?
A. 自分の現在の生活状況を大麻を使わなかったときの状態と比較するよう、友人に促すことから始めましょう。

 などなど(一部抜粋)。ご丁寧にここまで書かなければいけないとなると、大麻解禁でのお役所の苦労は、推してしるべしである。むろん、まだまだ課題はあって、

「解禁と同時に大麻の栽培も許しているのですが、『4株までは合法』というルールをどうチェックするのでしょう。また、正規販売店での価格はブラックマーケットで買うのと同じか、すこし高い設定だとか。政府のお墨付きがあるので粗悪品はないでしょうが、州ごとに違う販売価格や需要と供給のバランスが落ち着くまでには、2年ほどかかるのでは」

 今後、何やら問題は起きそう。頭を抱えていそうなカナダ政府の職員こそ、ハイになってすべて忘れたい、のかも。

週刊新潮WEB取材班

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