潜入取材「豊洲新市場」トラブルガイド 解ける冷凍マグロ、崩壊する「コールドチェーン」のコンセプト

社会週刊新潮 2018年10月25日号掲載

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「豊洲新市場」のトラブルガイド(1/3)

 こういうのをご祝儀相場と呼んでいいんだろうか。いや、待てよ。“相場”は今後も上昇するかもしれない。観光客が押し寄せる豊洲新市場で、いま起きているトラブルの数々。しかも、死亡事故も起きかねないなんて声まで聞こえれば、トラベル気分も吹き飛ぶか。

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 引っ越しの語源については諸説あって、その一つは、身分が高くなって屋敷を移ることを「引き越え」と言ったことに由来する、というものだとか。そうだとすれば、今までよりも立派で快適な屋敷に、高ぶる気持ちとともに移り住む、というニュアンスがあるわけだが、はたして、この平成最後の大移動は、引っ越しと呼ぶに値するだろうか。

 もっとも、83年の歴史を誇った築地市場の“引っ越し”先となった豊洲市場は、ある意味、十分に立派である。もともと、関東大震災で出た瓦礫によって埋め立てられた地域だが、「豊かな土地になるように」という願いを込め、豊洲と名づけられたという。

 そんな縁起のよい名の土地に、築地の1・7倍に当たる約40ヘクタールの敷地を確保し、投じた金額も、数年前の見積もりの1・4倍の約5700億円にもおよぶ。だてにカネをかけてはいないはずだ。なにしろ、外気の影響を受けっ放しだった築地と違い、24時間の完全な空調によって低温管理が可能な、閉鎖型のコールドチェーン機能が備わっている。交通の便が多少悪いのは玉にキズでも、十分“引っ越し”に値する――。

 と、まあ、外形的にはそう見えるわけだが、実際のところは、中に入ってみなければわからないのが世の常である。そうこうするうちに10月11日、いざ豊洲市場が開場すると、やれ渋滞がひどい、やれ小型運搬車のターレが燃えた、人に衝突した、というトラブルが次々と聞こえてきた。立派なソトヅラと裏腹の実際のカオをたしかめるために、ここは一つ、潜入してみるほかあるまい。

 だが、豊洲市場は広く、建物も水産卸売場棟、水産仲卸売場棟、青果棟の3棟に分かれている。

「こうした卸売市場は本来、すべてが一平面上にないと荷物の行き来がうまくいかないものなのに、卸と仲卸が別棟で、しかも各棟が3階から5階建てなので、上下運動がある。非常に非効率的で、キッチンを作る際にシンクと冷蔵庫置き場を別の部屋に設置してしまうようなものです」

 とは、建築エコノミストの森山高至氏の談。とまれ2日間、4人の記者が市場内に散らばった。

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