綾瀬「ぎぼむす」VS石原「高嶺の花」の明暗、外見の美しさを強調し過ぎて陥ったワナ

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“綾瀬はるかvs石原さとみ”の流れ

 ホリプロの看板女優として同世代の2人。共に今世紀初頭にデビューし、多くのヒット作品で主役やヒロインを演じてきた。この2人の名前をGoogle Trendsで検索すると、両者の勢いの歴史が浮かび上がる(図3)。

 当初は『世界の中心で、愛を叫ぶ』(04年:TBS系)で体当たり演技を魅せた綾瀬はるかが、『白夜行』(06年:TBS系)、『ホタルノヒカリ』(07年:日本テレビ系)『JIN1-仁-』(09年:TBS系)などの作品にも恵まれ優勢だった。

 ところが『失恋ショコラティエ』(14年:フジテレビ系))以降、石原さとみの“可愛すぎる表情としぐさ”“妖精的あるいは小悪魔的言動”などで、勢いは一気に高まる。『5→9〜私に恋したお坊さん〜』(15年:フジテレビ系)、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』(16年:日本テレビ系)などの時代に綾瀬を圧倒した。

 しかしこの1~2年、勢いはひと頃ほどではなくなっている。今年1月期の『アンナチュラル』(TBS系)では、新たな方向性が垣間見えた。ところが彼女の見た目を強調した今回の『高嶺の花』で、失速感が色濃くなったと言わざるを得ない。

 いっぽう綾瀬はるかの高評価は、爆発的ではないものの、コンスタントに続いている。デビュー当初10年ほどは、天然・ぐうたら・可愛い“女の子”の役が多かった。ところがこの5年、俄然進化を始めた。

 大河ドラマ『八重の桜』(13年:NHK)、大河ファンタジー『精霊の守り人』(16年~:NHK)、『奥様は、取り扱い注意』(17年:日本テレビ系)では、身体能力の高さを活かし、アクションで魅せる技も身に着けた。そして『奥様は、取り扱い注意』に続き今回の『ぎぼむす』で、常識が欠如したキャラクターを自然に見せる演技力をつけ、さらに人間性を滲ませる微妙な表現力を発揮し出した。こうした進化が、変わらぬ高評価につながっているのだろう。

 こうして2人の女優としての流れを俯瞰すると、石原さとみの『高嶺の花』は正解だったのか疑問がわく。

 彼女に欠けているのは、“天然・ぐうたら・可愛い”からアクションなど“演技の幅の広さ”を開拓した綾瀬はるかのような進化だ。石原は「世界で最も美しい顔100人」に選ばれ続けてはいるが、表面的な美以外の領域への進化を戦略的にして行かなければいけない。

 その意味で、これまでにない法医学者の演技に挑戦した『アンナチュラル』は、次のステージの可能性を垣間見せた。ところが見た目の美しさを強調したが、内面性で違和感を抱かせてしまった『高嶺の花』は惜しかった。気持ちが離れた視聴者を一定数出してしまった点は、大いに再考する必要があろう。

 年齢と共に進化する女優像とは何か。失敗した今こそ、新たな方向性を戦略的に詰める必要がある。

メディア遊民(めでぃあゆうみん)
メディアアナリスト。テレビ局で長年番組制作や経営戦略などに携わった後、独立して“テレビ×デジタル”の分野でコンサルティングなどを行っている。群れるのを嫌い、座右の銘は「Independent」。番組愛は人一倍強いが、既得権益にしがみつく姿勢は嫌い。

週刊新潮WEB取材班

2018年10月9日掲載

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