「大坂なおみ」一家の物語 祖父と母親の“断絶”と“和解”

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 人に歴史あり――。日本テニス界の歴史に金字塔を打ち立てた大坂なおみ(20)。その陰には、波瀾万丈の「大坂家ヒストリー」が潜んでいた。祖父と母親の断絶、そして和解。大坂が乗りたがっている東京ドームのジェットコースターを思わせる、起伏に富んだなおみ一家の物語。

「ありがとうございます。身内として嬉しいです。東京での試合(9月17日から始まった東レ・パンパシフィック・オープン)も観に行きます。試合の前後には、なおみと会う予定です」

 孫の活躍に目を細め、こう語り始めた大坂の祖父の鉄夫さん(73)。しかし、大坂家の「ファミリーヒストリー」に話が及ぶと途端に口が重くなった。

「そんなこともあったな……」

 9月8日、テニスの四大大会で日本勢初の優勝という偉業を達成した大坂のフィーバーは留まる気配を見せていない。

 13日に日本に凱旋して開かれた記者会見は各テレビ局が生中継し、その際の大坂の「今は眠い」という何とものんびりした発言は、改めて彼女の“天然ぶり”を知らしめた。

「実力とキャラ」を兼ね備えた大坂のファンは各地で増え続けていて、彼女と「縁」のある北海道の根室市役所には、

〈祝優勝 全米オープンテニス 女子シングルス 大坂なおみ選手〉

 こう書かれた懸垂幕が掲げられた。また大坂の「生誕の地」である大阪府は「感動大阪大賞」の授与を検討。さらに安倍晋三総理がインスタグラムに、

〈この困難な時にあって、日本中に、元気と感動をありがとう〉

 と投稿すれば、彼女の物まね芸人である「小坂なおみ」にも1日で10件以上の仕事依頼が殺到するなど、さながら「大坂バブル」の様相を呈しているのである。

 そんな超人気者の大坂の来し方を振り返ると、彼女の特徴である無垢な笑顔とは些(いささ)か印象の異なる、意外な「大坂ファミリー」の物語が浮かび上がってくるのだった。

 先にも触れたように、大坂は大阪府で生まれた。ハイチ系米国人である父親のレオナルド・フランソワ氏(51)と、日本人である母親の環(たまき)さん(47)の間の次女である彼女は、3歳の時に米国に移住し、現在はフロリダで暮らしている。では、その大坂と根室との縁はと言うと、それは環さんの故郷だということである。

 冒頭に登場した鉄夫さんは環さんの父親にあたり、今も根室に暮らして、根室漁協の組合長を務めている。約130坪の豪邸は「サケ御殿」と呼ばれ、サケ・マス漁の対ロシア交渉に携わるなど、長者番付に名前を連ねたこともある彼は地元の大立者として知られている。しかし、鉄夫さんのことを知る近隣住民のひとりは、

「環さんは高校の頃から札幌に出ていました」

 こう振り返り、地元の名士の娘である大坂の母親の消息を把握しておらず、その上、根室でフランソワ氏と会ったことがある人物は皆無なのだった。

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