反日ドラマおなじみの台詞は「トヅゲキー」「バガヤロ」、近年は変化も? 爆笑「中国抗日ドラマ」対談

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近年の変化

岩田 そうそう。でも最近はこうした昔ながらの日本兵のイメージだけでなく、台湾でも活躍する超イケメン俳優が日本の重光葵を演じたりするなど、変化が出ています。振り返れば、12年の尖閣諸島問題が起きた頃に大量の抗日ドラマが作られ、ありとあらゆる実験的な作品が量産されました。当時は抗日ドラマの黄金期だったと言えるでしょう。最近、「抗日作品はバカバカしい」という意見がネットで少なからずあり、「過度な娯楽化は控えるべし」と政府が通達を出したため、かつてのようなトンデモさは鳴りを潜めてはいます。

西谷 抗日を隠れ蓑にすればやりたいことがある程度はできたのに、やり過ぎて政府の干渉を受けることになったと。このジャンルは衰退していくのでしょうか?

岩田 そう簡単に抗日ものがなくなることはない。ただ、はっきりしているのは、日本を完全に追い抜いたら次のターゲットはアメリカということです。

西谷 それは朝鮮戦争ドラマ?

岩田 その通り。中国人民志願軍を135万人投入したという説もありますからね。でも、まだ年に1作品出ればいい方で、差し当たっては、「アメリカに感謝される」ってジャンルが多いですね。「飛虎隊之国際大営救」(画像1)は、第2次大戦中に雲南省で国民党軍を支援したアメリカの義勇軍がテーマなのですが、作中ではエリアも年代もメチャクチャ。しかも空軍に黒人が所属しており、この時代ではあり得ないことです。史実ではアメリカが国民党を助けたのに、ドラマのなかでは、共産党軍がアメリカ兵を助けて感謝されるシーンばかり。抗日と変わらず、ツッコミどころ満載なんです。

西谷 それ以外の傾向は?

岩田 人民解放軍を讃えるプロパガンダ・ドラマが多く生まれています。解放軍が世界のリーダーとなってテロ組織を壊滅させたり、アラブやアフリカなど世界中で戦ったりしていて、アメリカに取って代わりたいという中国の野望がことに反映されているように感じました。米中貿易戦争でアメリカとの関係が悪化しているので、朝鮮戦争などをテーマにした反米ドラマが増えるかもしれません。中国が今後アメリカをどう描くか、見ものです。

西谷 日中関係が比較的安定しているから、日本を刺激する作品が焦眉の急を要するということはないのかもしれません。これまで現実の世界では一貫して日本が優れていたから、ドラマの世界で日本を貶めて溜飲を下げるというルサンチマンが根強くあった。そのギャップが縮んで行くなら、ことさら日本を叩く抗日ドラマは趣を変えていくのでしょう。

週刊新潮 2018年9月20日号掲載

特別対談「日本軍に美人少佐? 鬼畜兵が中国女性を緊縛! 『中国抗日ドラマ』は爆笑コメディ」より

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