「三田佳子」次男は38歳で逮捕 中高年がなぜ覚醒剤を好むのか

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38歳にもなって

 彼が最初に逮捕されのは18歳。当時はいくら有名人の息子とはいえ、名前がわかるような形で報道していいのか、といった声もあったはずだが、こうなってみるとそんな議論もむなしいばかりだ。

 今回の逮捕時の彼は38歳。いい年こいて何を――というのが普通の反応だろうが、実は覚醒剤を乱用するのは、分別のない若者ではなく、分別のない中高年、というのが現実なのだ。

 暴力団関係の著作が多いノンフィクション作家の溝口敦氏は、著書『薬物とセックス』で、ずばり「乱用するのは中高年」という項を設けて、このあたりの事情について解説を加えている。以下、同書をもとに見てみよう(引用はすべて『薬物とセックス』より)。

 残念ながら覚醒剤の再犯率は年々増加傾向にあり、全体では64・8%に達する(2015年のデータ)。このうち50歳以上が83・1%、40代が72・2%、30代が57・9%と年代の上昇に比例して再犯率も上がっているのだ。

「覚醒剤事犯で検挙される年齢層は第3次覚醒剤乱用期のピークといわれる1975年では20代が半数を占めていたが、近年では40代以上の中高年が増え、2016年では55・4%を占めているという」

 このデータから見れば、覚醒剤常習者の世界では、38歳はまだまだ「若手」とも言える。

 なぜ中高年が覚醒剤に手を出すのか。背景には覚醒剤を使用してのセックスを好む性向も関係しているだろう、と溝口氏は見ているが、取材に協力してくれた麻薬取締部関係者P氏は次のように解説をしている。

「なぜ中高年世代に多いのかは、薬物問題に詳しい弁護士が言っています。『中高年は仕事が忙しく、人間関係やリストラ、資金難などから悩みや不安を抱え、いったん薬物に手を出すと切実さからエスカレートしやすい』と」

危険ドラッグは怖い?

 この説明に納得できない方も多いことだろう。「ストレスのせい」だなんて、痴漢も同じようなことを言うじゃないか。それに若者だってストレスはある。単なる言い訳を鵜呑みにしているだけだろう……。

 実はP氏も、この弁護士の解説を否定はしないものの満足していないようだ。「あくまでも印象とか肌感覚に基づくもので、正式な分析結果ではない」と断りながら、次のような要因もあるのではないか、と語っている。

「一つは中高年が初めて薬物に接した、経験あるいは情報に接した時期は大半が10代後半から20代前半と思われます。現在50代から60代ならば、1970年代中盤から80年代にかけてと思われますが、そのころ薬物といえば、覚醒剤ですね。今のように合成麻薬は殆ど出回っておらず、危険ドラッグは存在しませんでした。耳にするのは覚醒剤、友人、知人が手を出すのも覚醒剤、最初に有機溶剤(シンナー等)を覚えたとしても、行き着く先は覚醒剤でした。大麻もありましたが、今ほどは流行してなかった。

 こうした人が中高年になって薬物に手を出すとなれば、やはり覚醒剤になってくる」

 50代の乱用者には「危険ドラッグとか、わけの分からないものは怖い、手を出さない」と言う者もいたという。覚醒剤も十分怖いのだが、このあたりの感覚はそれこそ一般人にはわけが分らないところだろう。

 P氏はさらに「若者の覚醒剤離れ」を指摘する。「人間やめますか」に代表されるキャンペーンが奏功したとも見られるが、

「若者には覚醒剤イコール、シャブだ、やくざだ、怖い、ダサイというイメージがあるのではという印象も受けます」

 さらに、そもそも覚醒剤の検挙者の半数は暴力団員なのだが、その業界もまた若者離れの傾向が強く、高齢化が進んでいる。結果として中高年が増えるということになる。

 売る側からしても、中高年のほうが客として望ましいという事情もあるという。

「密売人の中には、『客は中年に限る。カネを持っている。社会的地位もあるから無茶打ちはしない』と言っている者もいます」

 無茶打ちはしない、などという分別があるくらいなら、もう一歩進んで「もう打たない」となっても良さそうなものだが、それを許さないのがこの種のドラッグの怖さなのだろう。

デイリー新潮編集部

2018年9月19日掲載

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