面倒くさいから独りで逝きたいわよ――「樹木希林さん」が本誌に語った死生観

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「独りで逝ってくれ」

〈それにしても、ここまで転移が激しい“全身がん”だと、普段の生活でも気遣いが必要なのではないか。〉

 う~ん、でもね、つい飲んじゃうのよ、お酒。飲みすぎないように気をつけてはいるんだけどね。逆に、とにかく薬が嫌いだから困っちゃうわね。薬、飲まないのよあたし。ただね、あたしの真似して薬飲まないで死んじゃう人が出ても困るから、くれぐれもあたしの真似はしないでね。人それぞれなんだから。けど、あたし思うのよ。あたしのがんがもし簡単に治っちゃってたら、もう少し野放図に生きていたんじゃないのかしら。いまでも充分野放図ですけどね、ふふ。野放図の有り方がもう少し増してたかもね。ですからね、やっぱりちょっとは謙虚になってるんですよ。ええ、これでも謙虚になってる方なんです。

〈ならば、一人娘の也哉子(37)と本木雅弘(47)夫妻、そしていまでも“夫”である内田はどう受け止めているのか。〉

 ムコの本木さんは映画で『おくりびと』もやってますから、「お義母さん、どこで死にたいですか?」って聞くだけですよ、うふふ。娘もね、電話をかけてきては「お母さん、生きてるの?」って言うの。そういう家ですから。

〈死ぬための生き方や死生観など、話の中身は決して軽くないのだが、この人にかかると、その謝々とした語り口もあって、どこかペーソスも漂わせた上質なユーモアに彩られるから不思議だ。〉

 内田さんなんかね、「お前な、頼むから死ぬときは独りで死んでくれよな。俺は連れていかないでくれ」って言うんですよ。あっはっはっ。俺を連れていかないでくれだなんて、もう笑っちゃって笑っちゃって。

〈実はこの話には前段がある。娘の也哉子が最近イギリスでタロツト占いをしてもらった際、占い師とこんなやり取りがあったのだという。〉

 娘にはね、お母さんが先に死んでお父さんが残ると困ることがたくさん出てくる、って心配があるんですよ。そしたら占いの人に「大丈夫です。お母さんはつまんないことでちょっと転んで、あれ、起き上がらないなと思って見てみたら死んでるとか、そういう簡単な死に方をします」って言われたらしいの。それで時々電話して「生きてる?」って聞いた方がいいって。そしてね、こうも言われたらしいのよ。「お母さんが死ぬときには即座にお父さんの襟首つかまえて逝くから大丈夫よ」って。あっははは。だからね、その話をあたしが内田さんに喋ったの。そしたら「頼むから独りで逝ってくれ」って。あたしだって面倒くさいから独りで逝きたいわよね。でも占い師がそう言うんだもん。可笑しいったらありゃしないわね。ま、そんなふうに面白がってますから、あたしたち。

〈本人も念を押す通り、考え方は人それぞれ。だがやはりこの人、どこか人生の達人という匂いも醸し出す名女優なのだ。〉

週刊新潮 2013年3月21日掲載

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