午前3時の北海道地震――熟睡中を襲う“大揺れの恐怖”にどう立ち向かうか

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恐ろしいのは寝室の家具とクーラー

 暗闇の恐怖に襲われたのは、04年10月23日に発生した新潟県中越地震だ。マグニチュードは6.8。川口町(現・長岡市)では震度7、小千谷市や山古志村(現・長岡市)などで6強を観測した。発生時間は午後5時56分。長岡市の危機管理防災本部が混乱を振り返る。

「10月下旬で午後の6時近くですから、そもそも日が暮れていたんです。そこに激しい地震が襲い、市内では停電が発生しました。あっという間に真っ暗になりましたね。そして午後7時48分までの間、震度6強や5という激しい余震が、10回連続して発生しました。自宅の中でも一歩も動けず、ひたすら朝を待ち続けたという人も、決して少なくはありませんでした」

 真夜中に地震が発生した際、何よりも必要なのは照明だという。

「我々長岡市では、数日分の非常食や水など、災害発生時に必要なものを準備しておくように広報していますが、そのリストの中には懐中電灯が含まれています。それも1家に1台では足りません。家族の1人1人に1台が必要です。防災グッズとしては手回しで発電できる懐中電灯が人気ですが、乾電池の予備を備蓄しておけば、普通の懐中電灯でも大丈夫でしょう」(同・長岡市)

 真夜中の寝室でケガを負うリスクはバカにならない。防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は「盲点はクーラーの室内機です」と警鐘を鳴らす。

「激しい地震が起きても、しっかりとした業者がちゃんと設置していれば、クーラーが落下することはありません。たとえ1カ所が外れたとしても他は持ちこたえ、ぶらぶらするだけで済んだというケースもあります。しかし私は、地震でクーラーが落下した現場を見たこともあります。今年のような猛暑になると、殺人的な忙しさから、ごく一部の設置業者が手抜き工事に手を染めます。あれだけの重量となると、頭に落下すれば即死でもおかしくありません。寝室には何も置かないのがベストですが、そういうわけにもいかないでしょう。なるべく背の低い家具にして、クーラーを含めて足側に設置するのが重要です。頭の周りには、なるべくモノを置かないことです」

 最も現実的な対応策として、前出の山村武彦所長は「とにかく布団をかぶって丸くなれ」とアドバイスする。

「緊急地震速報に気づかず、激しい揺れで目が覚めたなら、布団をかぶって丸くなるより手はありません。ベッドで寝ている方なら下に潜る方法もありますが、そもそも睡眠中に落下物の被害に遭わないよう、事前に準備しておくことです。枕元には夜光テープを貼った懐中電灯を置く。手回し式に拘る必要はありません。最新のLEDランタンなら電池が1週間はもちます。そして停電の危険性を考え、寝室のドアと玄関にも夜光テープを貼っておくといいでしょう」

 室内の散乱対策として、専門家は「靴を枕元に置け」というアドバイスすることが多い。だが山村所長によると、現実的には難しいという。

「1995年の阪神・淡路大震災で、ガラスなどの危険な破片が室内に散乱するリスクが注目されました。その後、靴を枕元に置く人が急増したのですが、やはり邪魔になるんですね。しばらくすると、誰もが靴を片付けてしまいました。確かに靴を置けば理想的ですが、三日坊主で終わるのなら、厚手の靴下を準備したほうがいいかもしれません。何よりガラスの飛散対策をしっかりと行うほうが重要でしょう。防止シートなどが販売されていますので、有効活用してほしいですね」

 災害対策を億劫と感じる人も、決して少なくはないだろう。だが、自分で精神的なハードルを上げて躊躇を感じているのなら、本末転倒だ。

 水を備蓄するにしても、わざわざ用意するのは確かに面倒かもしれない。ならば余分に買っておけば、立派な備蓄だ。貴方が怠け者を自覚するなら、まずはLEDのランタンを買うことから始めてみてはどうだろうか。

週刊新潮WEB取材班

2018年9月7日掲載

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