高橋真麻の世渡りに見る 2世タレントたちの罪と罰

エンタメ2018年9月6日掲載

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 素人の歌って聞かされて面白いのかな。フジテレビの女子アナが自局イベントで歌合戦をやっていたが、これは高橋真麻の悪影響が大きいと思う。女子アナもノリノリで歌えてナンボ、という前例を作ってしまったせいで、後輩たちもとんだとばっちりだったろう。とはいえ真麻に至ってはああでもしなければ、キー局の女子アナである存在意義が打ち出せなかったのではないか。

 2世という生き方。それは真麻に限らず、永遠にお茶の間の圧力から逃れられない人生である。「恵まれていることを鼻にかけない、明るいいい子じゃないと許してもらえない」という圧力。男は敷居をまたげば7人の敵あり、という言葉があるが、2世にいたっては1億人の意地悪姑がいるようなものだ。親の金とコネで生きてきたでしょ、という先入観にさらされながら、容姿やふるまいを常に厳しく品定めされる。だからこそ2世の多くは、体を張ったり自虐したり下積みをアピールしたり、「ほら、思ったより庶民的なんです」ととっつきやすさを過剰に印象づけようとしがちに思える。親の影響力という「ゲタ」を自ら脱いでみせて初めて、世間は愛してくれるのだから。真麻だって今でこそ、「ああ見えて実はアナウンス技術が非常に高い」と評判になった。しかし局アナ時代の熱唱ぶり含め、ちょっとイタい感じすれすれの「ああ見える」印象を、数々の捨て身じみたエピソードによって「でも憎めない」に塗り替えてきたからこそ、ようやく本業が評価されるようになったのだと言えないだろうか。

 もちろんそんなパフォーマンスをせずとも、最初からさすがはサラブレッド、という2世もいる。言うに及ばず宇多田ヒカルや、杏、安藤サクラ、松田龍平・翔太兄弟など。村上虹郎ら若手の活躍もめざましい。賛否両論あれど、Kokiもそうかもしれない。とはいえ宇多田や杏は親の名字を前面に出していなかったことも含め、そもそも別格の実力者だったのだと賞賛する声も多いのは事実だ。

 そしてそんな清く正しい2世が頑張るそばから、どら息子・どら娘らのスキャンダルは定期的に起こる。高畑裕太しかり、坂口杏里しかり、親の名字を名乗るタイプに多い気がするのは因果なものだ。親の七光りさえ届かない心の奥底には、深い闇もあるのだろう。必要以上に注目を浴びながら、羨望と嘲笑の狭間を綱渡りする2世たち。そのストレスは、思った以上に強いに違いない。

恋愛スキャンダルだらけの2世界で輝く真麻

 2世たちが生まれながらにして背負っている、血筋といういわれなき罪と、自由に生きられないという罰。その窮屈な世界に対する反動なのか、彼らはできちゃった婚や離婚も多いように思う。2世タレントどうしで結婚した仁科克基と多岐川華子は短期間で離婚した。できちゃった婚ののち離婚した例としては松田龍平やいしだ壱成(最初の結婚)、北野武の娘の北野井子などもそうである。最近では草刈正雄の娘の紅蘭が未婚のまま妊娠を発表し、新田真剣佑は数年前、隠し子疑惑を報道された。

 想像だが、2世ならではの本来の屈託のなさが発揮されるのは、芸能界よりも恋愛においてなのかもしれない。好きだから好き、嫌といったら嫌、と純粋につき進める幼児のような万能感、悪く言いかえれば世間知らず感。それは小さい頃から特別扱いされてきた環境のたまものと言えないか。

 かたや真麻は、結婚したいのになかなかできないキャラ、と扱われがちだ。かつての愛嬌あふれる逸話の数々が功を奏してか、世間知らず感は世間ズレしていない箱入り娘というブランドに昇華され、過去の2世たちのような恋愛トラブルとは今のところ無縁である。さらに交際相手も一般の会社員ばかりで、良くも悪くも世の姑目線チェックは発動しない。一方で自虐的なエピソードをちょこちょこ差し出すことも忘れず、とっつきやすい2世極まれりである。巨乳をイジられても、大食い姿を撮られても、ブスと言われてさえ、NG無しと言い切る強さとおおらかさの前に、並の2世はもはや太刀打ちできないのではないか。

 会社員生活を経たことで、他の2世より芸能界から一歩引いて自身を見つめる冷静な視点が備わっているのも強みだと思う。ちなみに真麻はコネ入社じゃないと言っているようだが、それは自意識が言わせるのか、公正な会社だと古巣の体面を保つために言っているのかは不明である。どっちにしても、いやいやまさか、と言いたくなるものだが、これもツッコまれるための持ちネタとしてあえて言っているのだとしたら空恐ろしささえある。数々の2世タレントたちの屍を越えて、仕事も恋も正解を引き出し続ける2世界の星・真麻。早押しクイズ風のCMで「越後製菓!」と答える高橋英樹の満足げな顔が重なるのは許してほしい。2世タレントの罪と罰を、今後も軽やかに乗り越え続けてほしいものだ。

冨士海ネコ