前田敦子と工藤静香から読み解く アイドルたちの「勝つ」結婚

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 アイドルの賞味期限は短い。だからこそ彼女たちはモードチェンジをはかりながら、タレント寿命を延ばそうと走り続ける。まるで何度もサイコロを振り続けながら、「上がり」を目指すすごろくのように。純情可憐なアイドルから、一人の確固たる人気女性芸能人となる道のりは意外と険しい。特に難所は「恋愛・結婚」であり、ここで脱落する者は多い。

 その点、前田敦子はつくづく強運である。持って生まれたアイドル性もさることながら、ここぞという時には勝つ底力が備わっている。今回の勝地涼との結婚で女を上げたと言われ、難局を乗り切ったのではないか。ちょうど剛力・前澤ショックの時期だったことも、相対的に好感度を上げたと思われる。

 世の中には、「こう見られたい」というセルフイメージの一環で男選びをする女としない女がいる。前者はうまく行けば勝ちだが、打算が透けて見えた途端に好感度は下がる。前田は過去、泥酔写真をうかつに撮られたこともふまえ、自身のイメージにわりあい無頓着なように思う。だから後者だろうが、今回の結婚は彼女のイメージを結果的に向上させた。好きになったのは、演技力に定評のある中堅どころの男。顔だけがとりえの男や成り上がりの金持ちではないことで、意外と人を見る目があるしっかり者、となったわけだ。結婚が報じられた際、主語がほとんど前田であったことを含め、勝地から見れば余計なお世話という話である。とはいえ、お互い伴侶が芸能人であれば、その分メディアに出る時間が増えるというメリットがある。さらに人気や実力のある相手ならなおさらだ。アイドルすごろく、手に手をとって4マス進む、といったところか。

 今どき「結婚」をひとつのゴールと見るのは旧時代的ではある。が、恋愛禁止という不文律で人気を博したアイドルが、結婚で好感を呼ぶというのは画期的ではないか。いずれにせよ、前田は結婚によって芸能界での地位を盤石なものにした。国民的アイドルのセンターを経て、ドラマや映画の主演をつとめ、才能ある男性芸能人と結婚。卒業直後に泥酔合コン写真を撮られたのは今となっちゃご愛嬌。アイドルすごろくとしては、ひとつの稀有な「上がり」を若くして達成したように思う。

アイドルすごろくのマス目をのばした工藤静香

 一方、工藤静香である。同じ秋元康銘柄のアイドルグループ・おニャン子クラブ最大の出世頭。グループ解散後30年も経つというのに、今の今まで第一線であるという意味では怪物と言える。

 アイドルらしからぬ歌唱力の高さで、紅白にソロ出場。1マス進む。二科展連続入賞でアーティストとしての滑り出しも上々。2マス進む。YOSHIKIの飲酒運転が原因で交際発覚。2マス戻る。そして、木村拓哉とのできちゃった婚。一気に6マスどころか九蓮宝燈で「上がり」と思われた。しかしさすがは嵐を起こしてすべてを壊す女。今度は次女がモデルデビューし、ブルガリアンバサダーに最年少で就任ときた。アイドルすごろくに「子どもの出世」までぶち込み、まだ「上がり」じゃないのよ、とマス目をのばしたようなもんである。同期どころか後進さえもが、まだすごろくの半ばでサイコロを降り続ける中、「ちょ、待てよ!」と言いたくもなったろう。芸能人寿命のために、打てるだけ手を打つ工藤。おそらく彼女は、世間で噂されるほど悪妻ではないだろう。が、先々を見すえる用心深さは並大抵のものではない。

 ちなみにこのアイドルすごろく、いま気になるのは大島優子の出目である。かつて紅白歌合戦で突然の卒業宣言をした時に感じたのは、前田への強い対抗意識だった。さいたまスーパーアリーナで行われた前田の卒業宣言と同等以上の価値を、自分の卒業にも持たせてやる、という野心。そんな大島のすごろくはまだ全然終わらない。振っても振っても1しか出ないサイコロに業を煮やし、後輩をくさす動画をアップして1回休み、というマスにいるていたらくだ。しかも休んでいる間にライバル・前田はなかなかの形で上がりを迎え、指原莉乃もいい目を出し続けている。工藤静香に至ってはマス目をのばした。SNSでは前田を祝福していたようだが、勝ち気な大島が選ぶ道は二つ。前田よりも話題になる良縁を見つけて「上がる」か、もともとこんな勝負バカらしいと思っていた、とすごろく自体を反古にするかである。今は留学中のようだが、いったい大島がどこで手を打つのか、彼女の「上がり」を見るのが怖いような気がする。

(冨士海ネコ)

2018年8月22日掲載

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