素麺or冷やし中華? 生ビールor赤ワイン? 我が身 我が子を「熱中症」から守るのはどっち

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【Q3「素麺」か「冷やし中華」か または「おでん」か】

 いかに食欲不振とはいえ、飲料だけでは暮らせない。が、常日頃の空腹感には襲われず、我々はつい食べやすい食材を選んでしまいがちだ。総合内科専門医の秋津壽男医師が言う。

「素麺や冷麦は、栄養素がほとんど炭水化物のみで、器に氷がどっさり入っていて身体を冷やし過ぎてしまう。対して冷やし中華は、ほぼ常温で供されるので、その点でもよいと思います」

 先の荒牧氏も、

「特に高齢の方だと、食欲減退で『毎食素麺、あとはかぼちゃの煮物を少しだけ』なんてこともある。栄養状態の悪化は脱水に繋がりかねませんから、何とかたんぱく質は摂ってほしいところです。素麺より具材が載っている冷やし中華の方がいいでしょう」

 そしてさらに、

「冷房で体が冷えている方には、あえて『おでん』を薦めます。玉子やちくわでたんぱく質が摂取でき、大根には水分やカリウムも多く含まれます」

 が、身体を温めると聞いて思い浮かぶのは香辛料。最も身近なのはカレーか。

「もともとは漢方薬であり、激辛でなければスパイスが食欲をそそるので良いです」

 とは、先の秋津医師。また工夫次第で、熱くなり過ぎた身体をカレーで冷ませると指摘するのは、医学博士で医療ジャーナリストの中原英臣氏である。

「ナスやトマトなど、この時期に穫れる夏野菜は、いずれも体を冷ます効能があります。これらを具に使った『夏野菜カレー』は、食欲が落ちる夏には最適といえるでしょう」

【Q4 効果的なスタミナ食は「焼肉」か「鰻」か】

 先の秋津医師が言う。

「夏場は、はふはふと汗をかきながら食べる物の方が、食後の爽やかさで優ると思います。基本であるたんぱく質が摂れ、身体も冷えない焼肉をお薦めします」

 昨今の価格高騰はさておき、従来“夏バテには鰻”が通説であったが、

「鰻と違って、自分で焼きながらゆっくり時間をかけて食べるので、胃腸への負担も比較的ありません」

 もっとも、先の荒牧氏は付言して、

「市販の鰻を4分の1ほど使い、煮シイタケや錦糸卵などと一緒にちらしずしを作ってはどうでしょうか。酢飯でクエン酸も摂れるのでいいと思います」

 加えて、先の「夏野菜カレー」でも登場したナスを推奨するのは、ハーバード大学などで研究を重ねてきた大西睦子医師である。

「特定の1つの栄養素を多く含んではいませんが、カリウムやマグネシウム、カルシウムといった様々なミネラル、そしてB6やCなど多種のビタミンを含んでいます。また皮には、抗酸化作用のあるポリフェノールの一種であるナスニンが含まれています」

 が、そんな“万能野菜”も、取り扱いを誤ればかえって逆効果だという。

「ナス自体は脂肪を含まず低カロリーですが、他の野菜に比べて非常に油の吸収率が高く、揚げ物にした場合など、驚くほど高カロリーになるおそれもあります」

 その場合、同じくマグネシウムを多く含む食品で、

「大豆や玄米、そしてアーモンドやピーナッツなどが重要です」(先の河村院長)

 とのことだ。

【Q5 あえて飲むなら「生ビール」か「ワイン」か】

 ここで、多数の専門家による「厳禁」との意見を尊重しつつ、酷暑にあって日常を取り戻すべく、あえて晩酌の是非についても論じてみる。

「冷たいビールは体を冷やすので論外です」

 とは、先の秋津医師。

「かつて中国では暑い時期に『冷茶大王』を飲んでいました。逆説のネーミングで実は熱いお茶なのですが、冷たいものはその場は心地よくても、後で体が熱くなる。熱いお茶は汗をかいて苦しいが、飲んでしばらくするとひと汗かいて爽やかになるという仕掛けです。アルコールを飲むなら、常温の赤ワインでしょうか」

(2)へつづく

週刊新潮 2018年8月2日号掲載

特集「異常熱波に死亡者続出! 我が身 我が子を『熱中症』から守るのはどっち?」より

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