コカ・コーラの新製品がひっそり販売中止へ 飲料業界の“紳士協定”破り?

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何が問題なのか

 正式名称を「中小企業の事業活動の機会の確保のための大企業者の事業活動の調整に関する法律」という分野調整法は、昭和52年に制定された。わかりやすくいえば、中小企業のビジネス分野に大手が進出しないように規制を敷くもので、対象は飲料業界に限らない。ここでは、資本金3億円以上・従業員数300人以上が「大手」の定義である。

「飲料業界ではまず、制定時に『ラムネ』『シャンメリー(シャンパン風密栓炭酸飲料)』『ビン詰コーヒー飲料』『ビン詰クリームソーダ』『ポリジュース(ポリエチレン詰清涼飲料)』が対象となりました。これに続いて昭和57年に『サワー(焼酎割り用飲料)』が加わった。いずれも中小が開発し、育ててきたジャンルの商品で、大手はこれらを製造してはならないことになっています。違反で裁判沙汰になったようなことはなく、大手も中小も仲良くやっていこう、という“紳士協定”のルールですけれどね」(木村社長)

 今ではあまり見かけなくなった商品もあり、たとえば「ポリジュース」は、駄菓子屋などで売っていた、“ふにゃふにゃ”な容器に入っていた飲み物を指す。そこで気になるのが「ラムネ」がこれに含まれている点。たとえば大手のアサヒ飲料からは「三ツ矢サイダー」が出ていて、味はラムネと同じでは……。

「あれは『ラムネ』ではなく『サイダー』。大手は容器にビー玉を入れられません」(同)

 一方で“ラムネ味”を謳う缶チューハイが大手から発売されていたりと、なんともヤヤコシイ世界のようだ。「クレージーボール」は、このうちの「サワー」に引っかかった、というわけである。

「世代が変わってきて、“紳士協定”を知らない人も開発に関わるようになってきていますからね。『クレージーボール』は、開発者がアメリカの方だったこともあります。固有名詞である『サワー』の名称を使う時点でアウトなのですが、開発者は“酸っぱいもの”を意味する一般名詞だから問題ないと思ったと……。実はコカ・コーラさんは15年ほど前にもサワーを販売しようとしていて、その時は早目に情報を知り、発売前に止めてもらいました(※コカ・コーラ社は「未確認」と回答)。ところが、今回は発売発表まで商品の存在に気付かなかった。販売中止はおおむね受け入れて頂きましたが、とはいえ作ってしまった分はある。それはホテルのウエルカムドリンクなどの形で、『クレージーボール』の名は出さずに消費したいとのことでした」

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