未曾有の豪雨災害、福島の教訓が生かせていない“人災を上塗り”の発電事情

社会週刊新潮 2018年7月26日号掲載

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 2015年9月の鬼怒川堤防決壊は、太陽光パネル設置のために自然堤防を掘削したことが要因とされる。そして、この度の西日本豪雨でも同様の事故が起きていた。

 兵庫県神戸市須磨区ではパネルが約400平方メートルにわたって崩れ、山陽新幹線の運行が見合わせに。姫路市の傾斜地では、発電施設がおよそ3600平方メートルにわたって崩落した。さらに“東京ドーム39個分”の森林を切り開いてのメガソーラー設置計画が進む岡山県岡山市大井地区では、

「県や市にも、要望書や反対決議書などを提出していますが、岡山は県を挙げて“晴れの国おかやま”と謳って、太陽光発電を誘致していますから……」(地区の連合町内会長・萱野英憲さん)

 と、豪雨による山崩れを懸念する声が地元にはあるのだ。

 福島原発事故を受け、菅直人政権がエコの旗印の下に主導した太陽光エネルギーの推進。だが今日の太陽光バブルは、福島の教訓を少しも生かせていないのではないか。東京大学大学院の岡本孝司教授は、

「福島の事故は、地元の人たちに大変な迷惑がかかった。同様に太陽光発電についても、行政がしっかり管理していく必要があります。ところが、太陽光は急に事が進んだため、規制がまったくないのです」

 と指摘して、続ける。

「ソーラーパネルを山の斜面に置くなど最悪。安全面を考慮し、なにもないだだっ広い場所に置くべきです。ところが現状、造ろうと思えばだれにでも、どこにでも造れてしまう。その結果、山梨県北杜市のように、山林を伐採した急斜面にソーラーパネルが乱設されたり、長野県諏訪市の国定公園周辺を丸裸にしてパネルを置こうとしたりするケースが、問題になっています」

 それが周辺の住民にどれだけ迷惑をかけることになるか、考えられていないというのだ。また岡本教授は、太陽光発電の本質的な弱点にも触れる。

「夜中に発電できないことですね。また、雨や雪の日はもちろん、少し曇っただけで発電量はかなり下がる。ですから、太陽光発電を利用するためには、日中に発電した電気を大量に溜めておける蓄電池が重要ですが、現在の蓄電システムは機能が不十分。イノベーションが不可欠ですが、いまの技術力から考えると、ここ10年、20年で十分な性能で安価な蓄電システムを開発するのはとても無理です」

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