未曾有の豪雨災害、福島の教訓が生かせていない“人災を上塗り”の発電事情

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火力発電のCO2排出

 東京工業大学特任教授の奈良林直氏が補う。

「日本では太陽光発電が可能な日照時間は、1日平均6時間程度。晴天率は50%ほどなので、太陽光発電の実質稼働率は12・5%にしかなりません。しかも電力シェアはわずか3%。これに水力や風力を加えて、再生可能エネルギーは14%で、残り約84%を火力発電に頼っている。しかし、火力発電はCO2を大量に排出し、最も環境にやさしくないわけです」

 原発の大半が稼働していない日本は、ヨーロッパ諸国との比較でもエコとはほど遠いという。

「日本は発電量1キロワット時当たりCO2を540グラム排出していますが、これは世界でも最悪レベル。ヨーロッパは平均311グラムで、中では日本と同様に原発を半分止め、石炭による火力発電に切り替えているドイツが、450グラムと多い。一方、電力の78%を原子力で補っているフランスは46グラム、49%を風力から生み出しているデンマークも174グラム。要は、声高にエコが叫ばれている日本こそが、エコではないんです」

 さらには、こうして排出されるCO2が、以前なら未曾有であった豪雨を頻繁にもたらす地球温暖化の元凶とされているのは、ご存じの通り。危険性が一顧だにされない太陽光発電、結果としてもたらされるCO2の増加と気候変動。わが国はもはや、人災を幾重にも上塗りしていると言っても、過言ではあるまい。

 では、どうすべきか。岡本教授は、

「太陽光発電が勝っている部分も、原子力発電が勝っている部分もあるので、両方を上手に使っていかなければいけません」

 と、こう提言する。

「太陽光パネルも、悪質なケースがあるからすべて悪い、と結論づけるのは間違いで、きちんとやっている業者のほうが多い。原発もほとんどはまともで便利なものなのに、福島の事故で全部がダメだと思われてしまった。でも、一部だけを見てマルやバツをつけるのではなく、全部を見て判断すべきなのです」

 この世に不老長寿がないように、負の面がない策もエネルギーもない。だから太陽光にせよ、原子力にせよ、正と負のそれぞれを冷静に見極め、上手に利用し、規制すべきは厳しく規制する。人災を防ぐにはそれしかない。

週刊新潮 2018年7月26日号掲載

特集「『西日本豪雨』暴虐の爪痕」より

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