福島県民必読!放射能不安を煽って生れた  福島「甲状腺がん災害」

国内 社会 新潮45 2018年8月号掲載

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 福島で子どもたちが必要のない「がん手術」を受けている。福島第一原子力発電所事故による放射線汚染が「甲状腺がん」への恐怖となり、過剰な診断と治療を福島県民に強いているのだ。朝日新聞はじめとしたメディアもそれを後押ししている。
 確かに、福島第一原発の事故発生時に18歳以下だった福島県内の子どもたちの間で、甲状腺がんが「多発」しているのは紛れもない事実だ。そう聞いて、「チェルノブイリ原発事故と同じように、福島でも被曝が原因で子どもたちが次々に甲状腺がんを発症しているのだろう」と考えても無理はない。だが、ほとんどの専門家は、甲状腺がんと被曝との因果関係に疑いの目を向け、多発をもたらした「検査」への懸念を強めているのだ。(以下、「新潮45」2018年8月号より抜粋、引用)

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 関係者への徹底取材で「過剰診断」の問題に迫った、ノンフィクションライターの上條昌史氏によれば、「今年3月31日時点で、悪性ないし悪性疑いの判定数は199人。そのうち163人が手術を実施している。検査の対象となっているのは、原発事故当時18歳以下だった約38万人。通常は100万人に1~2人の発生と言われているので、(甲状腺がんは)明らかに“多発”している」と断じる。その一方で、「『精度の高い超音波によるスクリーニング検査で、本来は診断や治療の必要のない甲状腺がんを多数発見してしまっているのではないか?』という懸念が高まっているのだ。実際に、福島県が有識者や専門家を集めて開催している“県民健康調査・検討委員会”や“甲状腺検査評価部会”でも、甲状腺検査の縮小や見直しを求める声が上がっている」(同)というのだ。

 一体どういうことなのか――。

 大阪大学大学院医学研究科の内分泌・代謝内科学講師で、「県民健康調査」検討委員会のメンバーでもある高野徹氏はこう語る。

「甲状腺がんは転移能や浸潤能など、がんとしての性質を持ちながら、なぜかある程度で成長を止め、一生患者に悪さをしないものが多数存在します。それは、甲状腺がん以外の原因で死亡した人を解剖すると、非常に高い確率で甲状腺がんが見つかることからも明らかになっています。つまり超音波でしかわからないような甲状腺がんは、子どものうちからできているのですが、多くは臨床的ながんにまで進展しないのです」

 それを裏付けるデータが韓国にある。

「韓国では2000年頃に超音波によるスクリーニング検査が導入され、従来の15倍もの甲状腺がんが見つかり、手術数も急増した。ところが、早期診断・早期治療をしたにもかかわらず、いまに至るまで甲状腺がんの死亡率は変わらない。つまりは過剰診断だったと言える」(上條氏)

 高野氏によれば、14年頃から早期診断・早期治療の弊害が広く認識されるようになり、超音波検査はむしろ危険で推奨できないということが、甲状腺の専門家の間では国際的なコンセンサスとなっているという。たとえば17年には、アメリカ予防医療サービス専門作業部会が、世界中の論文を調査した結果、超音波検査を受けることにより甲状腺がんの死亡率は低下しない、その後の健康状態が改善することはない、という結論を出している。

 さらに、県民健康調査・検討委員会の座長である星北斗氏はこう語るのだ。

「する必要のない検査をして、それが結果として何ら利益をもたらさないのに発見して治療するというのは、疫学的に見れば過剰診断と言えるかもしれません。私自身は親の立場から、震災当時に中学生だった娘には、検査を受けなくていいと言っています。放射線の影響がないとしたら、検査を受けるリスクが大きすぎると判断するからです。
 
 だからといって検査をやめろ、と言うわけではありません。白黒つけるために無理に検査を受けさせたり、むやみに検診の範囲を広げるのは慎むべきだと思いますが、受けたい人はきちんと受けられる環境、また18歳以上で受けられる環境がない人にはきちんとフォローしていくなど、県民健康調査は適正化していく必要があると考えています」

 福島の子どもたちをこれ以上、苦しめてはならない。

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 上條昌史氏が手掛ける「放射能不安を煽って生れた 福島『甲状腺がん災害』」全文は、「新潮45」2018年8月号に掲載。11ページにわたって詳報している。

上條昌史(かみじょう・まさし) 1961年東京生まれ。慶応義塾大学文学部中退。編集プロダクションを経てフリーに。事件、政治、ビジネスなど幅広く執筆活動を行う。共著に『殺人者はそこにいる』『殺ったのはおまえだ』など。