蔑にされてきた「犯罪被害者」たちの戦い 「神戸連続児童殺傷」遺族が指摘する課題

社会 週刊新潮 2018年6月21日号掲載

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「あまりの理不尽さ」

 犯罪報道ではあまり扱われないが、被害者遺族は精神的な苦痛を受けることに加え、経済面の損失も大きな課題だ。後遺症の影響で仕事を失うなど、収入が激減することも多い。

 あすの会の結成前から国の給付金制度はあったが、その額は1人当たり平均400万円に満たない。加えて、自治体からの公的な見舞金制度や労災、加害者からの賠償を受けると一切支給されない仕組みだった。

 被害者が辛酸をなめる一方で、加害者は弁護人が付き拘置所で食うに困らぬ生活を営める。むろん、その原資は我々の税金である。

 会の代表幹事代行を務めた林良平さんが言う。

「僕は錯覚していました。我が国は加害者の更生のために莫大なお金を使っているから、被害者にも当然、手厚い救済制度があるものと思っていた。ところが現実は全く違っていたのです」

 95年、大阪市西成区の診療所で看護師として働いていた林さんの妻は、見知らぬ男に出刃包丁で腰を刺された。事件後、犯人と思しき者から電話があり、林さんの妻は犯人が恨みを抱いた医師と勤め先が同じというだけで、被害に遭ったことが分かった。

 辛うじて一命は取り留めたが、後遺症で車いす生活を余儀なくされ、今に至るまで仕事に復帰もできず犯人も逮捕されていない。

「治療費についても当然、被害者の負担です。妻の場合、当初は労災が下りましたが2年後には打ち切られ、それからは途方に暮れました」(同)

 事件前までビルの一室を借り、従業員を雇って鍼灸院を営んでいたが、妻の介護に追われ畳まざるを得なくなった。今は自宅が仕事場だが、収入は激減したと憤る林さんはこう振り返る。

「なんでやねんと……。あまりの理不尽さに、言葉もなかった」

 あすの会のメンバーは、林さんと共にこの苦境を訴えた。そして08年に「犯罪被害者等給付金支給法」が改正され、大黒柱を失った遺族の範囲を拡大した補償制度の拡充や、休職せざるを得ない被害者への休業補償も考慮した給付金の増額が決定されたのだ。

 20年前は給付対象153人に対し総額約5億7千万円が支払われたが、昨年度は対象者の数も414人と増え、その総額は約10億100万円と確実に支援は手厚くなっている。

 もっとも、まだ悔いも残ると林さんは話を継ぐ。

「本当に困っている人は会の活動にも出てこられない。まだまだ被害者への経済的な補償が十分でないですし、法が成立する前の被害者に対して、支援が遡及できなかった点が心残りです」

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