アメフト騒動で「池江璃花子」が特待生辞退を検討 日大に訪れる超氷河期

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 東京ドームや神宮球場など各地で、〈スポーツ日大〉と大書された広告の撤去が進む。アスリートの育成をPRしてきた最高学府が、自ら金看板を下ろしているのだ。その影響はこんなところにも。2020年東京五輪の目玉となる“特待生”にも、ソッポを向かれそうだという。

 爽やかなスマイルを、テレビや雑誌で見ない日はない。17歳の若さで個人の日本記録を12も持つ、競泳女子の池江璃花子(りかこ)である。

 そんな彼女が、日大へ進学すると報じられたのは、4月16日のことだった。

 スポーツ紙記者によれば、

「現在、淑徳巣鴨高校3年の池江は、複数の大学からオファーを受けました。その中でも、同窓の1学年先輩である長谷川涼香が在籍し、日本代表ヘッドコーチを務めた上野広治監督率いる日大水泳部で、東京五輪に向け本格的な調整を始めることにしたんです」

 日大の水泳部は、かつて“フジヤマのトビウオ”と呼ばれた故・古橋廣之進氏らが輩出した名門である。

 池江を三顧の礼で、特待生として迎える手筈だったが、

「今回の騒動を受け、彼女は辞退を検討しています」

 と明かすのは、さる日本水連関係者で、

「池江は、中学1年生の頃から師と仰いできた村上二美也(ふみや)コーチの下を卒業し、新たな強化体制を求めて日大を選んだ。けれど、アメフト部の幹部や広報の体たらくを目の当たりにすれば、彼女のみならず不安に思うのはあたりまえ。実際、複数の私立大学が彼女に再びオファーをして、獲得に動き出したと聞いています」

 来たる東京五輪でメダルの期待もある彼女を失えば、日大が創成期から培う“伝統”は後退するのだ。

 そもそも、日大が編纂した『日本大学のあゆみ』では、1920(大正9)年に「日本大学」の設置が認可された当初から、修練を兼ねた学生体育運動に力を入れたと書かれている。

 設置から僅か2年後の22年には、広大な多目的グラウンドの用地を確保して、さっそく翌年には全学陸上大運動会を開き、スポーツ振興に努めた。その成果は64年の東京五輪で花開く。

 日本代表選手団の実に12%強が日大関係者で、これまで輩出したオリンピック選手はのべ450名超、獲得したメダルの数は88個なんて逸話も残るのだ。

 そんな栄光を絶やすまいと、近年はトップアスリート推薦入試や奨学金制度を拡充。34の競技部すべてに専用グラウンドや練習場を完備するなど、将来有望な高校生の獲得に躍起だった。

 大学ジャーナリストの石渡嶺司氏が解説する。

「象徴的なのは、平昌五輪で2大会連続銀メダルを獲得したスノーボード男子・平野歩夢(あゆむ)選手ですね。昨年春にスポーツ科学部へ入学しましたが、日大は彼のためにハーフパイプの練習施設を作ったほどです」

 充実の環境を整えたわけだが、石渡氏はこうも言う。

「少子化の波をうけ、大学経営におけるスポーツ強化は、もはや宣伝の道具と化しています。けれど、大学は第一に教育機関で、優先すべきは学生を守ること。ですから、今回の日大の一件は話になりません。全国のスポーツ指導者、選手たちからの信頼は失墜しています。いくらスカウトしても、池江選手のみならず、進学したいと思うアスリートはいないでしょう」

 池江の所属事務所は、

「日大進学は準備段階で、決定したものではありません。今後の動向を見守っていきたいと思います」

 と静観の構え。創成期の伝統が途絶えれば、日大には超氷河期がやってくる。

週刊新潮 2018年6月7日号掲載

特集「『内田監督』は永久追放! 『日大』の断末魔」より

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