「それでいいのか?」と吉高由里子に問いたいドラマ「正義のセ」(TVふうーん録)

芸能週刊新潮 2018年5月31日号掲載

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 初回の最初の5分で「つまんねー」と思わせるドラマはそう多くない。各局が初回視聴率を気にして躍起になり、奇を衒(てら)ったり、さまざまな工夫を凝らす。なぜならメディアがこぞって取り上げるのも初回の比較だから。その後は高視聴率か、ネットで話題の作品しか取り上げない。視聴者もメディアも忙しいから、つまんねードラマをいつまでも観てられないわけだ。

 そんな状況で、まさかの超絶ダサいスタートを堂々と切ったのが「正義のセ」だ。ヒロインがひったくりに遭い、慣れないハイヒールを脱いで裸足で走る「うっかりドジっ娘」の幕開け。びっくりした。しかも検事の役だって。いつの話?

 ここ数年のお仕事ドラマで、女性たちの賞賛を獲得したヒロインは、皆賢くて手堅かった。世知辛い&胸糞悪い世の中に対して、しなやかに&したたかに立ち向かってきた。例えば「逃げるは恥だが役に立つ」の新垣結衣、「重版出来!」の黒木華、「アンナチュラル」の石原さとみ(あら、全部TBS)とかね。ドジっ娘が稚拙な言動で支持されたのは、遥か昔のこと。ドジっ娘の失敗と奮闘を愛でるのは、たぶん上から目線のおっさんだけ。こんな、時代と逆行したヒロインで、日テレはイケると踏んだの?

 その損な役を務めるのが吉高由里子。吉高は日テレ主演ドラマで大損こいてる気がするな。「東京タラレバ娘」といい、コレといい。

 男社会で日々なめられまいと、感情を押し殺して死んだ魚の目をして頑張る女性たちからすれば、吉高演じるヒロインはまったくもって共感できないと思う。

 感情と思い込みで動く割に、司法解剖や遺体のある現場は苦手。苦手なのは仕方ないが、口とんがらせてグズるなよ。冷静に対処しろよ。「被疑者が不倫」と聞いて大袈裟に驚くわ(いつの時代だよ)、男湯をのぞいておきながら「キャッ」っつって目を覆うわ(昭和の少女漫画か)、酒飲んで愚痴垂れて酔っ払って寝ぼけて、先輩(デキる男に見えない三浦翔平)にキスしちゃうわ、なんだこの娘は? 吉高の一挙手一投足がいちいち男になめられて見下されるような振る舞いばかり。女性が最も恥じて嫌悪し、極力避けようとしている言動ばかり。でもこういう女、おっさんたちが好きだよね。別の意味でおっさんずラブ。おっと、他局だ。

 根底に流れるおっさんウケ思想が気色悪いし、担当事務官役の安田顕も寛容すぎるし、地検支部の皆さんももれなく善人すぎる。

 吉高の実家のベタついた家族関係も妙に古臭いし、親子喧嘩もどうでもいい。家族相手に取り調べの練習ってのも嘘くせぇ。平成の今を鋭く切り取る要素がひとつもないまま、何を楽しみにすればいいのか。送検されてくる被疑者のクズっぷりを楽しめばいいと思ったが、こっちもなぜか善人が多めで、お仕着せ人情茶番劇だし。あ、昔話とか時代劇だと思えばいいのかな。

 ある新聞で、このドラマとヒロインを褒めちぎる読者投稿を読んだ。投稿者は70代男性。なるほどな。推して知るべし、その心根を。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。