謝罪会見で明暗を分けるポイント 危機管理のプロが解説

社会2018年5月24日掲載

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 まさに明暗を分けた、といってもいいだろう。

 余計に評判を落とすことになった日大アメフト部前監督の会見と、率直さに多くの同情を買い、感動すら呼ぶことになった選手の会見。

謝罪会見の明暗

 これまでにも謝罪会見で危機を脱したケースと、余計に事態を悪化させたケースがあったが、両者のちがいはどこにあるのだろうか。

 日本のPR会社の草分けであるプラップジャパン社の創業者、矢島尚氏(故人)は、著書『好かれる方法 戦略的PRの発想』の中で「危機管理のエッセンス」と題して、法人向けのリスクマネジメント(危機管理)に携わってきた経験を踏まえて、謝罪会見の要諦を語っている。

 その中から、今回のケースにも通じるルール、アドバイスをご紹介しよう。

(1)もっとも許されないのは「嘘」

「世の中が一番許さないのは、『失敗』ではなく、『嘘』なのです。特に企業がつく嘘を許さない。

 あらゆる企業がリスクを内包していますし、時にそれが顕在化してしまう、不祥事が起きてしまうということ自体については、世の中は一定の理解をしているのです。

『人間だから仕方が無いよ』という寛大な気持ちがあるのです。

 私たちはクライシスに至ってしまった企業の方たちには、まず無傷で危機を管理することは出来ないという覚悟を決めていただきます。そのうえで一体何を守らなければいけないのか、そのためには『何を犠牲にしなければいけないのか』ということを考えていただきます」

(2)情報開示の姿勢と誠意を示す

「記者が知りたいのは『事実関係』『責任の所在』『処分と今後の対策』の3点です。確認できている情報はその時点で開示すべきです。先延ばしにしていては隠蔽していると思われかねません。

 また、ちょっと調べればわかるような情報、一般的な情報なども隠さないようにすべきです」

(3)「企業の論理」を優先しない

「前提とすべきは『企業の論理』ではなく『社会の常識』です。あくまでも生活者の視点で考え、発言しなくてはいけません」

(4)ファッションにも要注意

「ある二代目社長は、謝罪会見をした際に、いつも通りのファッションで臨みました。その結果、週刊誌や新聞は『ボンボン社長、涙の会見』『腕に光る高級時計』「イタリア製ネクタイが目立つ』とからかい気味に会見を報じたのです。

 実際には、不祥事の起こる前と同じ普段通りのスタイルをしていたにすぎません。

 しかし、そのことがメディアにとっては格好のターゲットとなるのです」

(5)会見場のセッティングも重要

「時折、謝罪会見などでカメラマンが話者の後ろ側に回ってカンニング・ペーパーを写してしまうことがあります。すると『何だ、反省しているようでも紙を棒読みしているだけじゃないか』と批判されます。

 社民党の辻元清美氏が秘書給与を詐取した件で議員辞職する際の会見でも、手元の紙がアップで写されたりしていました。

 こういうことを避けるためには、たとえば会見場のテーブルを壁ギリギリに置いて、横側は何かで仕切ってしまい、カメラの位置を決めてしまうのです。

 これは会見の『仕切り』の問題です」

クライシスの本質

 他にも矢島氏は数多くのルールを挙げているが、こうして見るといかに前監督の会見や日大の対応がダメダメだったか、改めてよくわかるだろう。

 謝罪会見など危機管理の本質として、「危機」と訳されることが多い「クライシス(crisis)」という言葉の本来の意味を矢島氏は次のように説いている。

「実は原語にはもう少し広い意味があります。英語の代表的な辞書であるウェブスターによると、『重篤な状況が良い方向または悪い方向へと向かう転換点』『重大な局面へと向かっている状況』とあります。

 つまり、クライシスというと日本人は普通、悪い意味でしか捉えないのですが、実はそうではありません。普段使っている言葉でいえば『ターニングポイント』『転換点』という意味に近いのです。

 このクライシスを悪い意味だけに捉えてしまう方々は、どうしてもダメージを最小限に抑えたいというような方向へ動いてしまいます。ですから、ダメージ・コントロールに向かって行ってしまうわけです。

 そうなると、少しでもダメージを減らしたいということが第一目標になってしまうために、良からぬ考えも頭をよぎってしまうわけです。

 つまり『何とかごまかそう』という類の発想です」

 選手の会見後に日大が発表したコメントを見る限り、まだ当分、大学当局と前監督らは「チームプレー」で乗り切ろうとしているようだが、結果としては火に油を注ぐ形になっているようだ。

デイリー新潮編集部