男同士の“王道ラブストーリー”から目が離せない!(TVふうーん録)

エンタメ 芸能 週刊新潮 2018年5月17日号掲載

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「胸キュン・片思い・すれ違い」の3要素を描く、王道のラブストーリーは苦手だ。斜に構えてしまい、素直に視聴できない。さらに昨今は、男性が女性に対して「壁ドン・あごクイ・頭ポンポン」ときたもんだ。心の底から嫌悪。性的プレイの一環ならまだしも、日常で強要されたり、見下されるのは恋愛関係ではなく、主従関係と思っちゃうから。ついでに、いくら懇(ねんご)ろになっても日常で「お前」呼ばわりされるのは腹立つ。夫のことを「主人」というのも腑に落ちない。心が狭く、偏った恋愛観の持ち主は、イマドキの王道ラブストーリーが口に合わないワケだ。

 が、久々に胸ときめくラブストーリーを発見。王道の3要素をちゃんと入れ込みつつ、予測不能な恋の行方、さらにはコメディとしての純度も高い。ただし登場人物はおっさん。そう、「おっさんずラブ」である。

 ベビーフェイスと裏腹に大胸筋と腹斜筋がバキバキの田中圭が主人公。ロリ巨乳が大好きだが、恋人は5年いない。それもそのはず、甲斐性ナシの甘えん坊将軍で、身の回りのことはすべて母親任せ。合コンでも「江戸の火消し」レベルで話のタネを鎮火し、中身は中2。素直で人に優しい一面もあるが、モテる気配ナシ。運命の恋には未だ巡り合えず。

 田中の外見はどう考えてもモテ筋なのだが、性格や言動を見る限り、女性が明らかに敬遠する男を見事に演じ切っている。これ、この物語ですごく重要である。

 そんな田中が愛の告白をされるところから始まる。お相手は直属の上司でやり手部長の吉田鋼太郎、後輩で敏腕営業マンの林遣都だ。

 そう、BL。これは純然たるBLドラマ。遅ればせながら、46歳になって初めてBLの魅力を知ったよ。腐女子の醍醐味を今頃になって堪能しております。

 俳優界ではダンディ枠の吉田が目をキラキラ輝かせた乙女(手作り弁当はかなり重たい)を演じ、どちらかといえばキュート男子枠の林が、ゲイとしてのド直球を投げてくる(家事万能で巨根という設定。理想的♪)。

 困惑する田中、右往左往する田中、実はそんなにイヤじゃないかも、と同性愛に覚醒しそうな田中。とにかく田中圭がこの無邪気で繊細な難役を完璧にこなす。

 同じ営業部の主任で、結婚に興味がないと断言する潔癖症の眞島秀和あたりも、この恋に参戦してくるのではないか、と期待しちゃう。

 男性からすれば「はぁ?」と首をかしげる物語かもしれない。もしかしたら、センシティブな話題となっている「パワハラ・セクハラ」と受け取る人もいるかもしれない。でもね、女性たちは垂涎。気持ちは営業部の伊藤修子と同じ。鋭敏なレーダーで部内の微妙な空気を嗅ぎ取り、彼らの恋愛模様を密かに楽しむのだ。

 ちなみに吉田は既婚者だが、田中への愛を抑えきれず、妻(大塚寧々)に離婚を申し込んでいる。寧々の気持ちを考えると、かなりつらい・切ない・しのびない。

 しかし、女が邪魔者という設定は心地よい。王道ラブストーリーに女は不要と叩きつけられたような、ある種の諦観と解放感がある。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。