夏目漱石の恋心を偲ぶ湯と、川端康成が執筆に没頭した“雪国の宿” 文豪が愛した温泉宿

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文豪が抱いた恋心

 漱石が心奪われた浴室や滞在した部屋は、「前田家別邸」として保存され見学可能だが、残念ながら入浴することは叶わない。

 代わりに、往年のままの源泉をひく「小天温泉 那古井館」で湯に浸かれば、100年あまり前の文豪が抱いた恋心を偲べるだろう。

 つややかな単純泉を、漱石はこう描写している。

〈色が純透明だから、入(はい)り心地がよい。折々は口にさえふくんで見るが別段の味も臭(におい)もない〉

 実際、青いタイル貼りの湯船がお湯越しに鮮明に見える。また少し離れた所には、「草枕温泉てんすい」もあって、漱石が入浴したあの湯船に似せた「草枕の湯」も情緒たっぷり。露天風呂からは遠く広がる有明海が眺められ、夕陽に染まる海は比類ない絶景だ。

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