レーガンの電話で共同ミッション、日本の密使が動いた「米国人質」奪還作戦――NAKASONEファイル

政治週刊新潮 2018年2月1日号掲載

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機密指定解除「NAKASONE」ファイル(6)

 休暇中の中曽根康弘総理にかかってきた、ロナルド・レーガン米大統領からの電話。レバノンで起きた誘拐事件の人質にCIAベイルート支局長が含まれ、解決に協力してほしいという。電話の仕掛け人はジョン・シャヒーン。安宅(あたか)産業を破綻に追い込んだとされる男である。

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 70年代初めにシャヒーンはカナダのニューファンドランド島で石油製油所の建設を進めていた。中東の安い原油をガソリンやジェット燃料に精製して米東海岸の大市場に売り込む構想で、その原油調達に代理店として参加したのが安宅産業だった。ところが操業開始の直前に第4次中東戦争が勃発して原油価格が暴騰、また製油所の欠陥工事で一部の製品が出荷できず、安宅への債務は雪だるま式に膨れ上がってしまう。結局、製油所は破産を申請し、巨額の焦げ付きを抱えた安宅は伊藤忠との合併に追い込まれたのだった。

 その発端であるシャヒーンは安宅を潰した張本人とされ、小説やテレビドラマのモデルにもなった。それから約10年後に癌を患った彼は東京医科歯科大学の病院で治療を受けたが、その友人の一人が作家の落合信彦だった。落合の著書によると、大統領からの電話は、見舞いに訪れたシャヒーンの病室でのこんな会話から生まれたという。

「『私としては幼なじみのダッチ(引用者注・レーガンの意味)がこんな苦境に立たされているのは見るに耐えられない。なんとかして彼を助けてやりたいのだ』話はわかった。しかし、協力といっても私の出る幕など考えられない。それを彼に言うと、『あんたにはパイプ役をやって欲しいんだ』『パイプ役?』『そう。ナカソネとのね。いいかね。私の見るところアメリカ側がこの問題で失敗してきたのは政治的な手法で解決しようとしているからなんだ。経済的なテコを使っていない。もちろん今のアメリカじゃ使えないがね。だが使える国が一国だけある。日本だ』」(『挑戦者たち』集英社)

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