きたる大地震に備え…身元確認に「足紋」導入を 元捜査1課長の訴え

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偽造しにくい足紋

 なんでも、タイでは全国民の指紋が登録されており、04年のスマトラ沖大地震の際には、取り違えもなくすべての遺体の身元が判明したという。分からなかったのは、指紋登録のない、近隣国からの出稼ぎ労働者のみだったそうだ。しかし、日本で指紋採取となると、どうしても「犯罪」のイメージがつきまとう。

「日本では捜査の手法として発展してきた経緯がありますから、無理もありません。最近は指紋認証のマンションエントランスや携帯電話も登場してきており、プライバシーに大きく関わるものになってきています。その点、足紋であれば、他に使い道もないですし、ハードルは低いのではないでしょうか。そして偽造もしにくい。指紋であれば手術などで指先の皮膚を変えて悪用できますが、足紋となると範囲も広く、また1週間は歩けない。こちらのハードルは低いといえるでしょう」

 課題は、どう足紋を採取し、どこが管理するのか、という点だ。

「私は警察出身の人間ですが、警察が管理するのは避けるべきだと思います。どうしても犯罪捜査のイメージがありますからね。実際、『足紋を広めたいと思っているんです』と人に話すと、『どこかの未解決事件の現場に足が残っていたのか?』『残っていたから犯人を割り出すために国民の足紋が欲しいのだろう』なんて言われることもあります。ですから、例えば健康診断で体重測定の時に、一緒に足紋をとるというのはどうでしょう。これでしたら管理はそのまま医療機関ですから、個人情報保護の点から信頼できるはず。もっとも、体重計メーカーに提案したら『社外からアイデアは募集していません』と断られてしまいましたけれど……」

 一方で協力的なのが、NECだ。光眞氏が訴える足紋の有用性を聞いた同社は、スキャナで足裏を読み取る足紋採取器を開発。世に1台しかないこのマシンを用いて、何度か“足紋採取会”が行われた。「普及協会」が立ち上がる動きも見せ、足紋の存在を広める活動は進んでいる。

「これは聞いた話なのですが、85年の日航機事故の際には、足紋が決め手となって身元確認できた例があったそうです。夏場、事故被害者がタンスに裸足をくっ付けていたことから、そこで足紋が採取できたとのこと。自身が無縁仏にならないために、ぜひ足紋の有用性を知ってほしいのです」

週刊新潮WEB取材班

2018年4月14日掲載

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