「金正恩」電撃訪中、その狙いは 日本外交の敗北

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ババを引かされる

 これまでの強気な態度とは裏腹に、自信のなさが透けて見える。

「今回の訪中が事前に全く漏れなかったのも、金正恩体制に不満を持つ軍部からいつクーデターを起こされるか分からないという危機感があったからです。もちろん、これ以上原油を止められれば国がもたないので、核実験など到底できないですし、非核化を宣言せざるを得ない状況です」(同)

 だが、コトはそう簡単に運ばないと、国際ジャーナリストの春名幹男氏が言う。

「北朝鮮の核放棄は建前である可能性を否定できません。ですから、本当に放棄をしたのかという“検証”が重要になる。米朝会談で非核化を合意すれば、トランプ大統領は高らかに成果を叫ぶでしょうが、実際には、核をどこかに隠し持つことだってあり得ます」

 そこでこんなウルトラCすら予測されると、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏が指摘する。

「今回の訪中で、中国とは米朝会談での合意事項について事前に根回しをするはずです。米朝では北朝鮮が、(1)新しい核は作らない、(2)大陸間弾道ミサイルは開発しない、という2つを合意する代わりに現在の核兵器は保持するという条件を予め提示する可能性がある。アメリカ本土には手を出しません、ということです」

 アメリカファーストの大統領にとっては渡りに船だ。

「安倍総理がトランプといくら親密な関係を築いても、結局、損得でしか動かない大統領です。そこでババを引かされるのは日本。米朝会談も阻止できず、核の脅威にさらされ続けることになります。結果、北から経済支援を要求される。日本外交の敗北と言わざるを得ません」(同)

 自分のことしか考えない大統領と、森友問題に翻弄される総理大臣。そのミスマッチが導き出す答えは、北の暴君の高笑いなのだ。

週刊新潮 2018年4月5日号掲載

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