「将棋」と「囲碁」子どもにやらせるならどっち? 直感力、論理力、集中力を鍛えるマインドゲーム

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茂木健一郎が解く「将棋脳」と「センター試験」

 かくして藤井六段への評価は高まる一方だが、他方、対する囲碁の井山七冠(28)も負けてはいない。2月15日、七大タイトルの一つ、棋聖戦で6連覇を果たしたが、その内容が圧倒的だった。

 先の観戦記者によれば、

「挑戦者は王座戦、天元戦に続いて一力遼八段。3棋戦連続して挑戦者になるということは、一力さんの力がそれだけ図抜けていると言えますが、井山さんはその彼に10連勝。3戦をすべてストレートで下したのです。今の囲碁界での井山さんの力は、絶対的としか言いようがありません」

 若きスターが思う存分、躍動しているのが、今の囲碁、将棋界なのである。

「朝日杯での優勝によって、藤井さんは、左脳だけでなく、右脳も優れていることを証明しましたね」

 と解き明かすのは、脳科学者の茂木健一郎氏である。

 次の一手を考えるための「持ち時間」が4〜9時間などのタイトル戦に比べ、朝日杯は40分。考慮時間が短い、「早指し戦」である。

「この場合、思い浮かんだ手の精度を検証する時間が少ないので、より直観力が試されることになります。直観とは、瞬間的にパターン分析を行うことですから、右脳の動きが中心になる。対して、持ち時間の長い棋戦では、左脳による論理力や推理力が問われることになります」

 逆に言うと、将棋をやることによって、直観力に論理力、両方の能力が鍛えられることになるワケだ。

 茂木氏が続ける。

「早指しは、短い時間内に正確な結論を出さなければいけない。早指しの達人になることは、センター試験など、制限時間の短い試験で力を発揮するのに役立ちます。それに対し、『長考』の将棋に強くなることは、東大の2次試験など、じっくり考える必要のある課題への対応能力をアップさせることに繋がります」

 もちろん、「早指し」や「長考」の棋戦は囲碁にもある。だから、これらの特長が囲碁にも当てはまることは言うまでもない。

「インターネットの発達で我々は細切れの時間を過ごすことが多くなっている。その中で、将棋や囲碁は、現代で最も深い集中を必要とする。集中力を鍛えることにも結び付きます。そしてそこで得た集中力は、もちろん学習にも応用が利く。学びの吸収力を高める効果を生むのです」(同)

 子どもの脳を鍛えるための、非常に有効なマインドゲーム、と述べるのである。

(2)へつづく

週刊新潮 2018年3月1日号掲載

特集「『羽生』撃破で『藤井聡太』は最年少六段! ますます悩ましい『将棋』と『囲碁』子どもにやらせるならどっち?」より

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