長寿世界一のイタリア「チレント」地域 90代でも“オシャレ”、元気な100歳を目指す“街中運動”

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イタリア「チレント」地域で見つけた長寿の秘密(3)

 世界一の長寿地域と聞けば、だれもが気になる。そのうえ、高齢者の大半が無病息災とくれば、あやかりたいと願わない人はいないだろう。引き続き現地取材でお届けする南イタリアのチレント。実は食生活から日常まで、日本人が真似できる要素ばかりである。

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 世界の長寿地域には、いくつかの共通項が見られるという。アメリカの長寿研究家、ダン・ベットナー氏が挙げているのは、以下の項目である。日常的に体を動かす。生きがいがある。ストレスが少ない。腹八分目に抑える。野菜中心の食生活。赤ワインなど適量のお酒をたしなむ。社会的グループに参加している。宗教活動に参加する。そして家族間の絆が深い。

 ピッツァの聖地、ナポリから南東に120キロほど下った、ティレニア海に面したアッチャローリやピオッピなどの小集落をふくむチレント地方。真っ青な空と海、たわわに実ったオレンジやレモン、冬でも咲き乱れる花々など、まさに長生きできそうな風土である。

 事実、地域の平均寿命が男女合わせて87歳、住民7万人ほどのなかに百寿者が数百人いるという、世界一の長寿地域だが、その結果は風土だけによるものではない。その証拠に、この地域の高齢者たちの話を聞くと、右に挙げた項目を漏れなく満たしていることがわかる。すなわち、われわれ日本人も、そこを倣えばいいということだ。

 アッチャローリに暮らし、周囲の高齢者世帯のケアをする女性、パオラ・クッコさんによれば、

「みなさん、この地域伝統の、青魚や野菜、オリーブオイルを中心に食塩が少なめの食生活で、食事は昼にくらべると夜は控えめ。毎日赤ワインを少しずつ飲んできた人が多いですね。また、若いころからよく働き、歩いている。家族関係は密ですが、地域全体も家族のようで、気の合う人と日々交わって、会話を楽しんでいる。だからストレスも溜らないんです」

 ベットナー氏の指摘と見事に重なる。その結果、多くの人が病気知らずで、米伊の研究でも、この地域の高齢者の多くが精神的に若々しいばかりか、がん、アルツハイマー、心臓病、脳血管疾患、糖尿病とも無縁であったことは、既にお伝えしたとおりである。

 食生活に関して言えば、

「地中海食が動脈硬化の予防に適していることは医学界の共通認識で、認知機能の低下を抑える効果もある。オリーブオイルとワインを別にすれば、地中海食と和食には共通点が多い」

 と、東大名誉教授(老年医学)の大内尉義(やすよし)氏。

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