「働き方改革」を勘違い、上司から“ジタハラ” キリギリス栄えてアリ滅ぶ日本に

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手段と目的が逆転

「働き方」評論家の常見陽平氏は言う。

「今の『働き方改革』は、手段と目的が逆転しています。本来、労働生産性を向上させた結果として、労働時間の短縮がなされるはずなのに、短縮ばかりが叫ばれている。労働者に新たな負担としてのしかかり、日本経済の壮大な撤退戦を行っているような気がします」

 教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏も、

「業務量が変わらないのに労働時間だけ減らせと言うのは、『食べても痩せるダイエット』と同じ、胡散臭さがあります。物事には表と裏がある。改革のメリットだけでなくデメリットもきちんと論じるべきです」

「イソップ童話」に「アリとキリギリス」の寓話があるように、労働の大切さは古今東西、繰り返し語られてきた。

「労働は大切なもの、価値を見出せるものですし、そもそも楽しく、喜びを感じられるものなんですけどね」

 とは、東海銀行元専務で、名大客員教授の水谷研治氏。

「より良いものを作る、サービスを提供する、ということが生き甲斐であり、幸せである。そうした労働の尊さ、楽しさを広めていくためにどうすれば良いのか、と検討するのが本来の『働き方改革』でしょう。しかし、今の『改革』は、ただただ働くのは悪しきこと、忌むべきことというムードを形作っているようにしか思えません。果たしてこれで日本という国や日本人が今後も立ち行くのでしょうか」

 その終着点は、キリギリスが栄えて、アリが滅びる世界――。

 勤勉は美徳ではなかったのか。パロディやブラックジョークを大マジメにやっているのが、今の日本人ということか。そうした未来は決して笑えない結末しか迎えない気がするのだが。

週刊新潮 2018年2月1日号掲載

特集「キリギリス栄えてアリ滅ぶ 心ある大人がため息をつく『働き方改革』」より

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