「働き方改革」を勘違い、上司から“ジタハラ” キリギリス栄えてアリ滅ぶ日本に

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“ジタハラ”

「“ジタハラ”という言葉を聞くようになりました」

 とは、経営コンサルタントの横山信弘氏である。

「時短ハラスメントの略です。マジメな社員が仕事を完遂させようとしているのに、『働き方改革』を誤って理解した上司に“早く帰れ!”と叱られる。あるいは、定時に終わらせることがプレッシャーとなり、追い込まれるケースがあちこちで起きているのです」

 確かに、時間を過剰に気にして仕事をすれば、食事も満足に取れないし、極端なことを言えば、トイレの時間がもったいない、なんてことになりかねないのだ。

 また、中には、時短を利用して、仕事をサボろうとする強者(つわもの)も出てくるという。

「働き方改革を利用して、仕事の手抜きをしたり、後輩社員や関連企業に丸投げするのです」(同)

 これらは「便乗時短」と呼ばれているそうだが、さる経済誌の記者によれば、パソコンを持ち帰り自宅で仕事をする「テレワーク」も、

「家で仕事をしているかどうかを会社はパソコンが点いているかどうかを基に遠隔で把握しますから、極端な話、最低限のノルマだけこなしていれば、家でパソコンの電源だけ入れて、適当に遊んでいても良いのです」

 と言うのだ。

「『働き方改革』で気持ちが悪いのは……」

 と、記者が続ける。

「労務管理を錦の御旗に、会社の社員管理が強まっていること。例えば、時流に合わせて、パナソニックは、『働き方改革支援サービス』というソフトを開発し、各企業が導入していますが、これ、パソコンの使用時間だけでなく、キーボードやマウスをどれだけ操作したか、どのアプリを使用したのかまで会社が把握できるのです。遊びでアプリを使ったらすぐに会社にわかってしまうのですが、でも、そこからアイデアが出るなんてことはあるじゃないですか。さらには、パソコンのフロントカメラで、リアルタイムで脈拍数まで測れるようにするそう。社員のストレスチェックという美名のもと、会社にそこまで管理されることに、誰も疑問を感じないのでしょうか」

 実際、「働き方改革」で優良と紹介される企業には、効率化のため、同じフロアでメールのやり取りをしたらパソコン没収、分当たりの入力文字数管理、はたまた工場内を歩く速度を5メートル3・6秒に統一する、なんてところもあるとか。小学生もビックリのやり過ぎ管理。「働き方改革」とは、大人の社員を子どもに退化させることだったのか。

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