ジェンダーの壁を超えて“人間”としての生き方を描いた「アンナチュラル」第3話

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女性を阻む壁と偏見

 女性だから、男性だから、というように一概に特徴をくくることはできないし、してはならない。しかし、それが蔓延しているのが現代社会である。特に若い(といってもミコトは33歳だ。十分に年齢に相応する経験を積んでいる)女性に対しての風当たりの強さが、第3話ではこれでもかというほど描写された。検察側の新しい証人として立った老いた男性法医学者からは「女性だということでちやほやされるんでしょうが、未熟ながらもいっぱしの口をきく女性研究者が増えている」と言われ、烏田からは「責任転嫁は女性の特徴です。自分の確認不足を棚に上げて、人のせいにして感情的に責める」と侮蔑と言っていい言葉が浴びせられる。

 言い返せば感情的だとあしらわれる。同じ言説を男性が打ち立てても、何も言われないどころか「そういう見方もありましたか」と尊敬を得ることすらある。私のようなレビュアーもそうだ。女性作家の本、女優の演技をちょっとでも批判すると「若い女に嫉妬している」「まったく論理的でない」と否定されてきた経験は数知れない。そのたびに唇をかみ、黙っても負け、喋っても負けならどうすればよいのだと絶望してきた。もちろん涙を流そうものなら「女は泣けばいいと思ってる」と言われるので泣くことすら許されない。
 
 しかし、法廷で烏田にボコボコにされたミコトは夕子とともに、真の凶器探しのために、傷口の実験や遺体のホルマリン漬けの再分析など、あらゆる手だてを尽くして果敢に奮闘する。もちろん久部も、健気に参加だ。

 前回の第2話で、実は久部は、週刊ジャーナルという雑誌の記者から送り込まれた情報スパイ(何のためにかはまだ明かされていない)であることが明らかになり、久部が、記者の末次康介(池田鉄洋)と連絡を取り合っているシーンが随所にある。法廷で烏田と対立したミコトの様子が「理性の検事VSヒステリー女法医学者」という見出しで記事にされたことに対して苦情の電話を入れているところを見ると、久部はまだピュアな部分を持っており、末次のような海千山千のマスコミ業には染まりきっていないようだ。

 そんな中、日頃から妻に虐げられて女性不信に陥っていた要一が「私の人生、女なんかには預けられません」と言って、冤罪を認める意志を固めてしまう。

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