7年前の不祥事を教訓にできない「オリンパス」の隠し事

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S調査委員会

 結果、OSZは中国税関当局へ罰金も支払わず、入出国を制限されることもなかった。そこでOSZは14年12月にA社へ約4億円の報酬を支払っている。オリンパスOBがいうには、

「A社は、地元で“官僚へ袖の下を渡して、問題を解決する反社会的集団”と噂される札付き企業。それを一部の社員が問題視したことで、東京の本社に“深セン”の頭文字を取ったS調査委員会が設置されました」

 外部から弁護士事務所も加わったS調査委員会は、15年10月29日に最終報告書を作成したが、公表されることはなかった。また、A社への支払いには本社の決裁が必要だったことで、笹社長もS調査委員会の聴取を受けている。経済誌デスクの解説では、

「16年に情報誌が深センの問題を報じると、オリンパスはHP上に最終報告書の概要を掲載し、“日本、米国及び中国の贈賄関連法令に違反する行為があったとの認定には至っていない”と、“シロ”であることを強調しています」

 だが、その後に流出した最終報告書は冒頭で“法的意見を表明したものではない”と記している。また、当事者であるA社は、S調査委員会の聞き取り調査を拒否している。弁護士資格を持つ社員が、この問題を蒸し返すのはなぜか。

「米国には、FCPAなる海外公務員への賄賂支払いを禁じる法律があります。その対象は、米国内で経済活動を行う企業など幅広い。実は、オリンパスのブラジル子会社などが、医師を通じてブラジル当局の関係者へ賄賂を贈っていたのです。これを米司法省がFCPAに抵触すると判断し、一昨年の3月にオリンパスは罰金や制裁金など約723億円を支払った“前科”があります」(同)

 つまり、メールの主は、A社への依頼はブラジル子会社の件と同じ構図だと考えて警鐘を鳴らしているわけだ。オリンパスの広報・IR部に聞くと、

「米国司法省及び中国の関係当局へ報告、説明をしております」

 オリンパスがこの7年間で学んだのは、より巧妙な隠蔽の方法なのか。FCPAの公訴時効は5年。米司法省がこの先も見逃してくれる保証はない。

週刊新潮 2018年1月25日号掲載

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