吉田潮的2017年TVキーマンたちに拍手を!(TVふうーん録)

芸能週刊新潮 2018年1月4・11日号掲載

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 時折ふざけて「俺」を使う。自分を俺と呼ぶことで矮小(わいしょう)になる気がして。自虐とカラ元気といった意味も込めて使う。決して益荒男(ますらお)ぶりを気取るワケではない。「僕」や「私」では出せない印象操作だ。なぜそんなことを考えたかというと、先日一緒に飲んだ週刊新潮編集部のS氏が「あたす」を使っていたから。私でもあたしでもなく、あたす。志村けんか。彼はどんな印象操作を目論(もくろ)んでいるのか。無意識に中性を装う微妙な男心が垣間見えた気もした。

 男らしさとか女っぽさにもはや定型はなく、人それぞれではないかと思い始める。性別や属性にこだわらない笑いを見せてくれた芸人・ゆりやんレトリィバァのおかげでこんなマクラになっちゃったが、要はドラマ以外で2017年のテレビを振り返るという趣旨だ。

 ゆりやんは16年からブレイクしていたのだが、日テレの「女芸人No.1決定戦THE W」(12月11日放送)で優勝した。彼女の知的な芸の虜だ。と同時に、ホモソーシャルのお笑い界で、今後彼女が男目線でいじられて終わるのはしのびないと思った。Eテレで5分程度の冠番組をもってほしいな。

 お笑いといえば小林賢太郎だ。舞台にこだわり、テレビには出ない。ただし、年1回だけNHK BSプレミアムで「小林賢太郎テレビ」を制作。10日放送の「裏と表」では、並行世界を描く不思議なコントに、気味悪く脳裏に焼き付くキャラ、言葉の裏を読む面白さで魅せる。私が絵に描くと、ハイセンスな面白さが損なわれるので割愛。年1回って、そこそこ待ち遠しい。そんな番組、他にある?

 もうひとつ、NHKつながりで「レイチェルのパリの小さなキッチン」(Eテレ)も魅惑的な番組だった。つってもBBC制作なんだけどね。フードライターのレイチェル・クーが超狭いキッチン&使い古しの飾らない道具で、実にうまそうな料理を作る。バターの使い方が豪奢で大好きだ。ダイエットだのオーガニックだのと、こうるさいことは言わない。美味しいモノが心から好きなのだと伝わる。

 レイチェルはハル・ベリーを膨らませたような容姿にヴィヴィッドな色の服がよく似合う。今は欧州を旅する「おいしい旅レシピ」が放送中だが、パリ編には心と胃袋をがっつり掴まれた。

 さて。今年私を釘づけにしたのは元ナスDだ。テレ朝「陸海空 地球征服するなんて」の破天荒ディレクターで、芸人の仕事を完全に奪った。とにかく何でも食べ、体にいいと聞けば試す。植物の汁を塗りたくり、全身がナス色になったことでナスDとして一躍有名に。色が落ちたので現在は元ナスDだ。呪術で病を治し、リスザルを食すような未開の地の部族文化を体を張って伝えてくれた。でも情緒に訴える(胡散)うさん臭さは一切ナシ。毎回腹を抱えて笑ったし、頭が痺れるほどの衝撃を受けた。釘づけ大賞確定。

 別の意味で釘づけなのは、棋士の加藤一二三だ。観る者の視線を確実に奪う鼻と口元。歌に旅番組にと引っ張りだこのひふみん。余生をテレビ業界に搾(しぼ)り取られる姿を静かに見守っている。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。