北島三郎が語る「キタサンブラック」引退 “体調が悪い時、あいつが代わりに頑張ってくれた”

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辛くて、泣いて泣いて

――81歳になる今、一番古い記憶をたどると、ある別離の光景が浮かんでくるという。

「小学校2年の時、漁師の親方だったじいちゃんが持っていた錦盛丸という小さな船を売っちゃったんです。古くなったし家も大変だからって。私にとって船は家族の一人だと本気で思っていたくらいでしたから、なんで売っちゃうんだ!って反対した。けど、聞き入れてもらえず、買い手が引き取りに来たんです。船が浜辺を一回りして、ポーッと汽笛鳴らして去って行くとき、辛くて、泣いて泣いて……。買い手の方が気を利かせて、また戻ってきて、ポポーッて鳴らしてくれたんですけど、悲しくて、ずーっと砂浜を追いかけて……。

 今年最後のレースでキタサンブラックは引退しますが、これでお終いかと思うと、あの船と別れた時の情景が浮かんできます。また泣いてしまうかもしれないな。でも、今後は、種馬として北海道で余生を送る。そしたら第2第3のキタサンブラックを作り出してくれると信じています。私の体調が悪い時に、あいつが代わりに頑張ってくれた。あいつが新しい道に進んで現役を退いたら、今度は代わりに私が元気にならなきゃいけない。いや、元気になってしっかり歩けるようになってやる。そんな希望を持って、終わりのない歌の道を、もうちょっと、歩いて行きたいと思います」

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週刊新潮 2017年12月28日号掲載

特別手記「伝説の『キタサンブラック』引退! 『北島三郎』が語る『引き際の美学』」より

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