世界一有名な「コールガール」の死 息子がフェイスブックで伝える

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 この5日、ある訃報が世界中を駆け巡った。英国人クリスティーン・キーラー、75歳。肩書は、元高級コールガール(娼婦)――。

 なぜ一介のコールガールが、それほど知られた存在なのか。それは彼女こそ、英国で“20世紀最大の政界スキャンダル”と呼ばれ知られた、「プロヒューモ事件」の当事者だからだ。

 冷戦期の1960年代初め、当時10代だったキーラーは英陸相プロヒューモと在英ソ連大使館の海軍武官イワノフの2人と同時に性的関係を持ったため、彼女を通じての機密情報流出疑惑が持ち上り、英政界は大混乱。プロヒューモは辞任に追込まれ、マクミラン首相も辞職、保守党は64年の選挙で大敗を喫したのである。

「英国では、大衆紙はもちろん高級紙まで彼女の死を大きく扱いました」

 と語るのは、在英国際ジャーナリスト・木村正人氏。

「コールガールという言葉を使っていたのは大衆紙ザ・サンでしたが、売春婦であった経歴は高級紙でも詳細に紹介されていました。彼女の存在は、それだけ大きかったということです」

 日本でいう男好きのする気性の持ち主だったのだろう。プロヒューモ、イワノフと付き合いがあった際も、他に10人もの男と関係を持つ“売れっ子”だった。

 だが63年、別の一件で偽証罪に問われ9カ月の禁固刑を受けることに。出所後は2度の結婚をし、種違いの息子を2人儲けていた。

 同じく在英ジャーナリストの鈴木雅子氏はこう話す。

「晩年は、『こんな売春婦とは関わりたくないだろう』と息子達も遠ざけ、生活保護を受けて一人で暮していました。ちょうど来年、BBCが『クリスティーン・キーラーの審判』という番組を放送の予定です。負の経歴だけでなく、階級、人種、セックス等への偏見が変り始めた時代の象徴的存在として、彼女の生き方を見直そうとする内容だとか。その矢先だったのに……」

 フェイスブックで母の死を伝えたのは次男だった。彼は母の死をこう悼んでもいた。「英国史に名を刻むことになったが、母の人生を誇りに思う」――。

週刊新潮 2017年12月21日号掲載

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