拳法からボクシング世界王者に “シンデレラボーイ”尾川堅一

スポーツ週刊新潮 2017年12月21日号掲載

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 これは“シンデレラボクサー”の物語である。

 主人公は、尾川堅一(29)。

 元々、日本拳法の使い手である彼は、明治大では拳法部主将だった。ボクサーになるべく帝拳ジムの門を叩いたのは大学卒業後だ。

「ロンドン五輪金メダリストからWBA世界ミドル級王者になった村田諒太(31)など、今のボクシング界はアマで活躍したエリートをいかにプロで開花させるかという勝負になっています」

 とボクシングライターが解説する。

「その点、尾川は名刺代わりのアマタイトルを持っておらず、ジムにとっては売り込みにくい選手でした」

 村田らエリートがひしめく名門ジムの片隅で燻っていた尾川。だが、ある日、彼の前に突如“かぼちゃの馬車”が現れた。

「8月末、IBF世界スーパーフェザー級王者が防衛戦で体重超過してタイトルを剥奪され、王座は空位に。本来は同級1位と2位で王座決定戦をするところ、たまたま1、2位共に空位だったので、4位の尾川にお呼びがかかったのです」

 馬車は太平洋を駆け抜け、ボクシングの聖地・ラスベガスへ。そして日本時間10日、かの地で王座決定戦が行われた。相手は地元米国出身で同級5位のテビン・ファーマー(27)。

「渡辺二郎という先例がありますが、拳法出身のボクサーは珍しい。専ら右ストレートが武器で、華麗なフットワークとは無縁のファイトスタイルですが、それが試合ではまりました」

 結果は判定に持ち込まれ、敵地ながらも2-1で尾川が勝利した。

「日本のボクサーが米国で世界王者のベルトを手にするのは1981年の三原正以来36年ぶり。ラスベガスでは初の快挙です」

 愛妻と3人の息子たちの名が刺繡されたボクシングシューズが光り輝く。さながら、ガラスの靴のように。