黒澤明を思わせる「インドネシア映画」にグランプリ 東京フィルメックス

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「インドネシアの女性監督2人が、東京での映画祭でグランプリを独占するとは、映画作りの水準が非常に高いということ。快挙です」

 こう語るのは、さる大手映画会社のプロデューサー。

 第18回東京フィルメックスの授賞式が、11月25日、東京・有楽町朝日ホールで行われ、モーリー・スリヤ監督「殺人者マルリナ」とカミラ・アンディニ監督「見えるもの、見えざるもの」が最優秀作品賞を受賞した。

 松竹から日本映画製作者連盟事務局長に就いている華頂尚隆さん(60)が言う。

「アジアには優れた文芸映画作品の鉱脈があるのです。すでにインド、イラン、イラクの映画は日本でも知られていますが、インドネシアもその仲間入りを果たしたということ。家族、宗教、伝説など、人間の普遍的なテーマを扱う文芸映画は世界に通用するので、両作品のようにコンペでも素晴らしい評価を受けるのです」

 今回受賞した「殺人者マルリナ」は、カンヌ映画祭でも上映され、高く評価された。

「黒澤明監督を髣髴とさせる痛快アクション映画と言ってもよい仕上がり。もう一作の『見えるもの、見えざるもの』は、バリ島に伝わる伝説を題材にした詩的な味わいの映画。現実と幻想、過去と現在、伝統と現実世界が交錯する不思議な感覚に満ちています」(前出プロデューサー)

「東京フィルメックス」は“アジアの映画作家を育てる国際映画祭”を標榜し、2000年に創設された。力のある優れた映画作家たちを世界に先駆けて紹介してきた実績をもつ。

「今、インドネシアは、空前のシネコン・ブームです。主な上映作品は、文芸作品や独立系のもの」(同)

 受賞した2作品、今後の上映予定は未定という。

週刊新潮 2017年12月7日号掲載

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