医師たちの挫折、新たな道……選択と成長を描いた「コウノドリ」第8話

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 産科を舞台にした医療ヒューマンドラマ「コウノドリ」は、さまざまな出産、そして時には死と隣合せの過酷な医療現場のあり方を描いている。鴻鳥サクラ(綾野剛)、四宮春樹(星野源)ら産科の医師や、小松留美子(吉田羊)ら助産師たちの奮闘が、毎週出産の喜びや悲しみに寄り添い、多くの視聴者を勇気づけている。

 第8話は、新生児科医の白川領(坂口健太郎)と、産科の四宮、2人の医師がみずからのキャリアをどう選ぶか、岐路に立たされる様子が描かれた。

 四宮はサクラに、臨床の現場を離れ、研究医として別の大学病院に移ることを検討していると告げる。そこに、四宮の父、晃志郎(塩見三省)が倒れたと連絡が入り、四宮は故郷の石川県・能登に急遽帰ることになる。

 父がステージ4の肺がんを患っていることを知った四宮は、治療に専念するよう父を説得する。しかし父は、地域で唯一の産科医として「俺はこの町を、子どもが産めない町にはさせない」と誇りを持って生涯をかけ産科医であり続けると宣言する。それに対し「だったら生きろよ」と吐き捨てるように(この不器用さも四宮ならではだ)告げた四宮の言葉は、親を思う子が精一杯発した励ましのようでもあり、医師同士の信頼に基づく覚悟が滲んでもいた。

 過疎化が進む地域医療は、たったひとりの専門医がすべての症例を担わなければならない場合がある。県庁の金沢からやや離れ、冬には路面凍結して妊婦が運転して通院するのが困難である能登半島という設定は、そうした意味で非常に切実なリアリティがあった。四宮の父が、妊婦ひとりひとりの家族の様子まで気にかけ「母ちゃんによろしく」などと声をかけていた様子も都会の総合病院であるペルソナとは異なる患者への寄り添い方であったように思う。

 研究医に転身しようとしていた矢先の、父親の病という状況下で、今後四宮がどのような決断を下すのかが待たれる。

 一方、ペルソナでは風間真帆(芦名星)、陽介夫妻(高橋努)がお産を迎えていた。白川は新生児の様子から、産まれた後に肺に血液がうまく流れない新生児遷延性肺高血圧症と診断し、今橋貴之(大森南朋)に相談することなく独断で治療を進めていく。研修医の赤西吾郎(宮沢氷魚)が「他の病気も疑わなくて大丈夫ですか」と訊ねても、自信を付けはじめて成長を急ぐ白川は聞く耳を持たない。

 しかし真帆の子の状態は改善しなかった。今橋の診断により、実は新生児遷延性肺高血圧症ではなく、血管の構造奇形のひとつである、総肺静脈還流異常症であったことがわかった。「総肺静脈還流異常症」とは、人間の体内における重要な大血管のつながりがちぐはぐな状態で産まれ、血液の循環が最適化されていないという病気だ。血管の異常ゆえに、血液を循環させること自体に大きな負荷がかかる。新生児の弱い心臓では命取りになりかねないものだ。新生児期早期に心不全や呼吸不全を起こす代表的な病気で、判断は難しいものの、この可能性を見落としたことは、白川の自己の過信ゆえの過ちだった。

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