5年連続「100歳以上」が日本一多い島根県 食生活の秘密とは

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5年連続「100歳以上」が日本一多い「島根県」の秘密(2)

 県民10万人あたりの「百寿者率」が、5年連続で日本一なのが島根県である。しかも、一般的に65歳以上の20%が該当するサルコペニア(加齢性筋肉減少症)が、同県雲南市の場合には5%弱であるという。背景には、農業を続ける高齢者が多いなど、地域の特性があるようだ。

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 そうした健康体を形成する要素のひとつが食生活であるのは自明の理。島根県は東西に長く、海あり山ありの地形なのだが、

「県は日本海に面し、山間部、汽水の宍道湖もあります。海と山の幸、そして『宍道湖七珍(しっちん)』も楽しめ、食材の多様さが特長です」

 とは、県健康推進課の青木典子栄養士。海の幸では、血管をきれいに保つ働きのあるDHAやEPAが豊富なイワシ、サバなどの青魚、またカレイやイカも食卓にのぼる。武庫川女子大学国際健康開発研究所の家森幸男所長が言う。

「70年代末から度々健康調査で隠岐諸島に赴きましたが、島民は獲れたての魚やイカを内臓ごと野菜と一緒に炊き込んで食べていました。魚介類の内臓にはコレステロール値や血圧を下げるタウリンや、動脈硬化を防ぐと考えられる銅などの微量元素が含まれています」

 島根のシンボルとも言える宍道湖に目を向けると、

「命を育む『七珍』はスズキ、モロゲエビ、ウナギ、アマサギ(ワカサギ)、シラウオ、コイ、シジミを指し、地元では頭文字を取って『すもうあしこし』と言います。春はシラウオで夏はウナギ、秋はエビで冬はスズキにアマサギと、旬が過ぎても次が出てきて途切れず、コイとシジミは通年食べられます。淡水だけで育つとコイやウナギは泥臭くなりますが、宍道湖産は臭みがなく、スズキやシラウオも深い旨味があります」(宍道湖漁業協同組合の高橋正治参事)

 総務省の家計調査では、松江市の世帯あたりの年間シジミ消費量は約2200グラムと、全国平均の約7倍で堂々1位。管理栄養士の則岡孝子氏が言う。

「七珍は全般的に、タンパク質が多くて低脂肪。シジミには肝臓の解毒作用を活性化するタウリンのほか、肝臓強化作用で知られるオルニチンも豊富です。コイやスズキ、ワカサギやシラウオには、細胞の新陳代謝を促す、若返り効果のある亜鉛が含まれていますし、さらにシジミやコイにはビタミンB12もある。これには造血作用のほか、神経機能を維持・活性化する働きもあるので、高齢者の精神疾患予防に有効。宍道湖は長寿食材の宝庫といえます」

 一年中“サプリ要らず”の食生活が送れるのだ。

週刊新潮 2017年11月30日号掲載

特集「知られざる『百寿者』天国! 5年連続『100歳以上』が日本一多い『島根県』の秘密」より

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