偽装大国・中国もビックリな「GDP4%成長」政府発表 そのカラクリを解説

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「上が見たい統計を作る」

 私は日本最強の統計機関・経済社会総合研究所の能力を疑うものではない。現在、日本を含む世界の統計機関の多くは、GDPを弾き出すのに「X―12―ARIMA」という計算方法を用いている。

 これは、米国商務省が開発したもので、難しい言い方だが、「自己回帰和分移動平均」という手法を用いる。そこでは、数値を意図的に操作できないようになっているはずだ。もっとも、これは「建て前」だ。

 世界的に見ても、1カ月で4割もGDPを下方修正してしまうのは日本ぐらいだという。これほど数値が変わってしまうのは、速報値の後に発表される「法人企業統計」を用いるためとされるが、逆に言えば、その間、「仮の数値」をどこからか持ってきて“盛って”しまえばGDPを大きく見せることは難しくない。しかも、ひと月もしないうちに「改定値」が出てしまえば、「4%」成長のニュースを皆は忘れてしまう。

 うがった見方をすれば、経済社会総合研究所の幹部の人事権は総理官邸に直結する内閣人事局にある。

 安倍政権の迷走を見て「4%」という「打ち上げ花火」を上げておけば官邸から評価される。そんな“忖度”をした幹部がいなかったのか、エコノミストとして心配になってくるのだ。

 隣国・中国では、政府統計の信憑性が疑われ、中国共産党の幹部でさえ信用していないといわれる。

「しょせん、上が見たい統計を作るのが、下の仕事ですから……」

 最近、日本でGDPが発表されるたび、中国の統計部門の役人が、そうつぶやいていたことを、つい思い出してしまうのだ。

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田代秀敏(たしろ・ひでとし)
一橋大学大学院を経てみずほインベスターズ証券エコノミスト、日興コーディアル証券部長、大和総研主任研究員、ビジネス・ブレークスルー大学教授を歴任。『中国経済の真相』(中経出版)など著書多数。

週刊新潮 2017年10月19日号掲載

特別読物「偽装大国 中国もビックリ! 政府発表『GDP4%成長』実は『マイナス9・9%』のカラクリ――田代秀敏(シグマ・キャピタル チーフエコノミスト)」より

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