「トランプ大統領」が決断させた10月総選挙 米朝対立で

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「米朝」問題がメディアにこれだけ騒がれるのだから、泉下の桂米朝が「呼んだか?」と目を擦って出てきそうな雰囲気である。それはともかく、度重なる北の挑発に対し、安倍首相は米国のトランプ大統領と電話会談を重ねた結果、神無月の解散・総選挙を決断したというのだ。

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 桂米朝は枕でしばしば、落語には時候に構わぬことはつきものだと、夏に冬の噺をした弟子に触れた。脱いでいた背広を着たり、捲りあげていた袖をおろしたりする客が続出し……。

「描写が真に迫って大したもんやとおもてたら、冷房効き過ぎてただけやった」 

 としてツカむのだった。

 朝日、日経、産経に加えてNHKなどが17日朝に伝えた「臨時国会の冒頭 解散の見通し」の報。突如として吹き始めた解散風が、残暑の汗をさっと引かせるような戦慄があった。

「森友・加計のいわゆる『モリカケ問題』で露呈した首相自身の傲慢さへの批判が尾を引いた結果、7月の都議選で歴史的敗北を喫しましたね。その後の内閣支持率調査では不支持が支持を上回り、自信満々でぶち上げていた『憲法改正』の4文字を口にすることも少なくなっていたのです」

 と、政治部デスク。憲法改正の発議後に行なわれる国民投票と解散総選挙とを同時に行なうダブル選が首相の“秘策”だったのだが、そのことにも触れなくなったのはこの頃からである。

 しかし、そんな情勢を逆転させ、首相に伝家の宝刀を抜く決断をさせたのが、米朝対立だった。

「首相は9月3日に行なわれた北の水爆実験の前後から、解散を考えるようになったと言われています。安倍さんはトランプとちょくちょく電話会談していて、そのなかで“北の脅威は来年の方がずっと強まる”という確証を得たのです」(同)

 事実、8月29日朝、30日夜、9月3日の朝と夜に2人は電話で話しているのだが、その内容などについて、ある官邸関係者は、

「中距離弾道ミサイルと核までは認めるけれど、太平洋を横断してアメリカ本土を射程圏内に収める大陸間弾道ミサイルは作るな。そういう交渉を米朝間、あるいは中露を交えて展開して行きたいというものだったはずです。すなわち近いうちの軍事オプションはない。ただその一方で、来年9月9日には北朝鮮建国70周年の節目を迎えるし、それに向けてミサイル開発に注力するのは目に見えている。そんな状況下での解散は難しいと首相は悟ったようです」

 そう打ち明ける。煎じ詰めれば、米朝開戦という最悪の事態を避け、話し合いのテーブルに就こうという動きは出てくるものの、北の暴発はエスカレートしていくという流れなのだ。

 成行を見守る作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏もこの関係者の見解に頷き、こう話す。

「北朝鮮は今後も実験を続けます。ひとつには、彼らの技術がまだ完成していないから。もうひとつは、アメリカを交渉の場に引き出すという目的が達成できていないから。この2つが核開発の目的であり、それが成就しないうちは、核やミサイルの実験を止める合理的な理由はありません」

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