今期最も期待を裏切られたドラマへの恨み節(TVふうーん録)

芸能週刊新潮 2017年8月31日秋風月増大号掲載

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「飲酒と喫煙はOKにしましょう。複雑な事件の場合は事細かに説明してね。テレ朝の2時間ドラマレベルでセリフに紛れ込ませてくれればいいから。シャブとセックスはダメっす。そこはほら、BPO対策があるんで。あと、子供モノとお涙頂戴はマストね。初回で入れてくれるとありがたいかな。うんうん、下赤塚をクローズアップして地元盛り上げ系はアリですよ。

ウチは町おこしで成功してる例があるんで。『木更津キャッツアイ』とかね。夏だからホラーはOK。特殊効果映像バンバンいっちゃって、好きにやっていいですよぉ。ホラーは夏場にウケるんですよぉ。え? 日曜劇場をディスりたい? 土下座礼賛を馬鹿にする……いいっすよ、そこはうん、まあ、アリです。社内調整しますから。アクションは必須。あ、でも銃撃戦じゃなくて肉弾戦にしてください。『CRISIS』みたいな感じで。エンディングに踊るのは流行ってますけど、芸がないんで、踊る風に見せといて踊らないって感じにしましょうか。え、踊らないんだっつって(笑)。あとね、毎回冒頭でおさらいとあらすじを主役の瑛太に語らせてください。そこマストで。ベタでいいんで。お色気? ええとボインはアリですけどぉ、そこは深田恭子サイドの返答次第ですかね。シャワーシーンで顔と肩と腕の露出程度で。あと、馬鹿でも猿でも年寄りでもわかる、血のダイイングメッセージとか入れてくださいよー。そういうのウケるんですよ。

昭和ギャグ? いいですよ。『北の国から』オマージュはアリ。倉本聰礼賛、OKっす。あと、爆発シーン入れてください。派手でも地味でもいいんで。もちろんCGで。実際にはさすがにやれないですよ。『西部警察』? ああ、あれはいい時代でしたよねぇ(笑)」……てなことをTBS側から言われたのかな、大根仁は。どう考えても、彼の持ち味である、エッジの効いた作品とはまったく異なる。そう、「ハロー張りネズミ」である。

 これを褒めちぎる人は、大根仁作品を本当に好きじゃないんだと思う。羽をもがれた、舌を抜かれた、去勢された感じが否めない。テレ東深夜枠で「ライオン丸G」「湯けむりスナイパー」「モテキ」「まほろ駅前番外地」「リバースエッジ 大川端探偵社」と超絶良質な作品を世に送り出し続けてきた彼のドラマとは思えない中途半端さ。これはTBSの余計な横やりが入ったのだと妄想して、恨むしかないと思っている。

 この夏、最も期待していただけに、ホントがっかり。期待しすぎた私が悪いのでしょうか。「リバースエッジ 大川端探偵社」に肉薄するレベルの探偵モノが観られると勝手に思っていた私が悪いのでしょうか……。

 それでも4話・5話のホラーファンタジー回は、蒼井優と内田慈(ちか)の実力派女優の好演のおかげで楽しめた。ホラーが大の苦手な私でも、そこそこに。でも探偵モノじゃないよなぁ、これ。TBSというハコが、ひとりの天才を殺したのだと。彼の才能とセンスを踏みにじったのだと思うことにする。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。