化学五輪で金メダリスト 創立12年目「海陽中等教育学校」の実力

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 五輪といってもこちらは頭を使って競うものだそう。今月6日からタイで開かれていた国際化学オリンピックで、日本代表4人がメダルを獲得したのだ。文科省担当記者が言う。

「毎年7月に開かれる化学五輪は、今回76の国と地域から高校生約300人が参加し、実験と筆記問題が課せられました。金メダルを獲得したのは、愛知県・海陽中等教育学校6年生の坂部圭哉さんでした。昨年も金メダルで2年連続。将来は研究者になりたいそうです」

 あれれ? 高校生なのに、なぜ6年生なのかというと、

「実際には高校3年生ですが、この学校、一風変わった来歴なのです」(同)

 三河湾を望む好立地に位置するその学校は、2006年にトヨタ自動車が中心になって作った中高一貫校だ。

「次世代のリーダーを育てるため、トヨタの他に中部電力やJR東海など、中部財界の企業が200億円を投じて、全寮制の学校を作りました。12年、初めての卒業生が東大に13名合格したことで業界を驚かせたのです」(同)

 森上教育研究所の森上展安代表によれば、

「新設の一貫校では頑張って5、6名程度。それがいきなり2ケタですからね。ですが、開校後に東日本大震災が起きて、遠くの全寮制の学校より自宅や勤務地の近くに通わせようという風潮が強まり、この1、2年で戻ってはいるものの、優秀な生徒が集まりづらい状況でした」

 学校側はこんな手も打っていた。

「ここは寮費も合わせ、年間300万円近くの費用がかかります。そこで、6年前から特別給費生と言って、授業料などを免除する制度を始めたのです。四谷大塚など大手塾も優秀な生徒を受験させるようになり、その生徒が卒業する昨年度は東大合格者も2ケタに乗ると予想していた。結果は6名と届きませんでしたが、来年は期待できます。坂部さんがメダルを獲ったことも生徒に刺激を与え、浮揚力になるでしょう」(同)

 金メダルの思わぬ効果だ。

週刊新潮 2017年7月27日号掲載

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