我、「藤井聡太」にかく敗北せり――14歳の天才に敗れた14人の棋士インタビュー

国内 社会 週刊新潮 2017年7月6日号掲載

  • ブックマーク

■“終盤が強い”

 まずは、

「序盤、中盤、終盤を通して、とにかく悪手(あくしゅ)がひとつもありませんでしたね」

 と言うのは、北浜健介八段(41)。5局目の相手だ。

「一方で自分はミスが出てしまった。完敗です。攻めが強いとか受けが強いではなく、欠点がない将棋という印象を受けました。羽生先生も新四段の時は高い勝率でしたけど、やっぱり粗削りの部分もあった。でも藤井四段は既に完成されているように見えるのです」

 北浜八段が彼と盤を挟んだのは今年2月のこと。が、

「最近の棋譜を見ると、私が指した時より、はるかに強くなっていますね。このペースなら、今年中にタイトル戦に登場してもおかしくない」

 北浜八段に限らず、対戦した多くの棋士も“完成度”について言葉を重ねる。

 その中でも、

「事前に、藤井四段の師匠から“終盤が強いよ”とは聞いていたんですが……」

 と述べるのは、11局目の相手・小林裕士七段(40)である。

「私の時も終盤に差し掛かるまでは、6対4で優勢かな、と思っていたんです。でも、そこからやられてしまいました。こりゃ次にやる時には、終盤までに7対3くらいでリードしてなければノーチャンス、と思っています」

 藤井四段は、プロのトップ棋士も集まる「詰将棋解答選手権」で3年連続優勝している。その“強み”がはっきり生かされている。

 ただし、小林七段によれば、

「では現状で、羽生先生と比べると、羽生先生の終盤はこれまた桁違いに強い。いま真剣勝負で勝つのはさすがに難しいな、と思います」

 頂点への道のりは、やはり一朝一夕とはいかないと言うのである。

「藤井四段は、本当に王道の将棋を指しますよね」

 とは、9戦目で敗れた所司(しょし)和晴七段(55)。

「私の時も大きなミスを犯さなかった。派手さはなく、遠回りですが、確実な手を指す中でこちらを射程に入れる。そして、決めに行く時はギアを一気に上げ、ノータイムで確実に仕留めます。しかも、時間配分が上手くて、持ち時間を残しますから終盤にしっかりと読み込める。だから間違わないんです。仮に再戦したとしても、私にはもう……。弟子たちに期待しますよ」

 大半の棋士が、彼は現段階でトップ10〜20人に入れる実力を持っている、と評する。現状、藤井四段の対戦相手にこのクラスの棋士はいないから、ある意味、ここまで連勝を続けられるのも不思議ではないと言えるのだ。

次ページ:■格段の集中力

前へ 1 2 3 4 次へ

[2/4ページ]