タモリ倶楽部、アド街を世に送り出した伝説的演出家が語る「テレビの今」

芸能 新潮45 2017年7月号掲載

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菅原正豊。ハウフルスの「代表取締役“演出家”」を名乗る

「タモリ倶楽部」「出没!アド街ック天国」「THE夜もヒッパレ」「いかすバンド天国」「ボキャブラ天国」……誰もが知る名番組は、この男がいなければ生まれてこなかった。

 テレビの制作会社という、一般的には知られていない、だが欠かすことの出来ない場で40年にわたり番組を作り続けてきた伝説の演出家・菅原正豊氏。テレビ界の“絶滅危惧種”と言われる菅原氏に、気鋭のテレビライター・戸部田誠(てれびのスキマ)氏が迫る。(以下「新潮45」7月号より抜粋)

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 テレビがつまらない。そう言われて久しい。

 いくら視聴率が重要だからといって、作り手が視聴者におもねり過ぎているのではないだろうか。視聴者の好奇心の“下僕”になっては、作り手の姿が見えなくなってしまう。その結果、どれも同じような番組ばかりになりつつある。

 そんな時代に抗うように、個性的な番組を作り続けてきた男がいる。テレビ制作会社「ハウフルス」の“代表取締役演出家”菅原正豊だ。タレント頼りではなく企画ありきで自分のやりたいことをやっている。個性丸出し。そんな演出家は今のテレビにはほとんどいない。90年代以降のハウフルス制作番組のほとんどに構成作家として参加している海老克哉は、菅原を一言でこう形容している。

「絶滅危惧種」

 80年代末に、「いかすバンド天国」(TBS)で空前のバンドブームを巻き起こし、90年代後半には「ボキャブラ天国」(フジテレビ)から「キャブラー」と呼ばれる若手芸人たちの台頭が社会現象に。爆笑問題、ネプチューン、海砂利水魚(現・くりぃむしちゅー)ら数多くのお笑い芸人を世に送り出した。古くは70年代後半、「出没!!おもしろMAP」(テレビ朝日)内に登場したキャラクター「ムキムキマン」も大ヒット。伊丹十三監督の映画「タンポポ」は菅原が「愛川欽也の探検レストラン」(テレビ朝日)で企画したラーメン屋再生計画が元ネタだ。他にもサブカル色の強い「タモリ倶楽部」(テレビ朝日)、料理番組「どっちの料理ショー」(読売テレビ)や「チューボーですよ!」(TBS)、街の情報番組「出没!アド街ック天国」(テレビ東京)や「秘密のケンミンSHOW」(読売テレビ)、クイズ番組「クイズ世界はSHOW byショーバイ!!」(日本テレビ)、そして音楽バラエティの「THE夜もヒッパレ」(日本テレビ)などなど、バラエティの名作を数々世に送り出してきた菅原だが、その人物像は我々が抱く“業界人のイメージ”とは大きく異る。

「ホッホホホッ」

 話を聞きに行っても照れくさそうに笑いながら、「俺なんかの話を聞いてどうするの?」と言う。存在感は抜群で貫禄はあるが、威圧感はまったくない。収録スタジオでも常に笑っている。ピリピリとした緊張感は皆無。音響のスタッフの中には彼独特の笑い声を録音した「菅原の笑い」という音源を持っている者までいるという。自分の業績についても「そんなの自慢話になったらイヤだから」と多くを語らない。照れ屋である。だから、実績とは裏腹にこれまであまり表に出ることはなかった。

(中略)

「僕の作るバラエティというのは、どっちかというと最初は全部パロディから始まっているんですよ。王道の音楽番組じゃないし、王道の料理番組じゃないし、王道のコントでもない。そのジャンルの専門家だと、ああいう風には作れない。「イカ天」の審査員に「ロックは魂だから」とか言ってプロレスラーのラッシャー木村を置いたりしないよね(笑)。僕が遊んでいるんです」

【てれびのスキマ(戸部田誠)】

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 菅原正豊氏は、本文中に出てきた番組以外にも、伝説的音楽番組「メリー・クリスマス・ショー」を手がけたり、チャリティーマラソン、「サライ」が始まった回の「24時間テレビ」総合演出を担当するなど、テレビ界を牽引し続けてきた。「新潮45」7月号「テレビ屋稼業バカ一代」(戸部田誠)では、さらに詳しく番組制作時の裏話などを紹介し、その「面白さの美学」に迫っている。