ローソンだけじゃない 金融界にも「M資金」汚染

ビジネス

  • ブックマーク

Advertisement

■手数料15億円

 また、初老の男性は手数料について、

「日本MEDOに総額の5%にあたる150億円、運用担当の元財務官僚に自由裁量額の1%、15億円を手数料として振り込む手続きを行ってください。この事案には最低5つの金融機関に協力を要請する予定ですが、すでに2つの地銀から了承していただけました」

 決断を急かす一方で、

「手数料とはいえ、大きな金額ですから役員会の承認が必要でしょう。1週間以内に現金で4000万~5000万円程度を用意していただければ、私の権限で手続きの期間を多少は延ばすこともできます」

 この言葉を鵜呑みにして現金を手渡したら最後、男は行方知れずになり、そこで初めて騙されたことに気づくという。M資金に詳しい金融ブローカーによれば、

「銀行はマイナス金利に加えて、堅実な運用先が見当たらずに四苦八苦している。ですが、一時的にでも預金量を増やさなければならない金融機関も少なくないのです」

 目下、金融庁は地銀などの合併を推進。預金量を基準にして、対等か吸収合併かを判断しているからだ。

「そんな時に支払金利不要の巨額預金が入り、運用も担ってくれるとなれば飛び付く銀行幹部がいても不思議ではありません」(同)

 傍から見れば、こんな簡単な手口に引っかかる金融機関があるのかと疑いたくもなるが、財務省幹部は困惑気味にこう語る。

「当然、“日本MEDO”なる組織は存在しません。大方、経産省の外郭団体『NEDO』に引っ掛けているだけ。詐欺師が使うペーパーを読むと、金融庁のことを金融監督庁とするなど杜撰な記述も多い。ですが、うちが把握しているだけでこの数年、少なくとも北関東で2つ、四国で1つ金融機関が被害に遭っている。いずれも面子を重んじて警察に被害届を出さないので、実態を把握できないのですがね」

 静かに拡大する“M資金”汚染。人間の欲望が生み出した産物だけに、永久になくならない?

週刊新潮 2017年6月1日号掲載

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。